ネオニコチノイド農薬とミツバチ大量死

2020年7月9日Slow News Report



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速水:Slow New Report今日は堤未果さんによるリポート「ネオニコチノイド農薬とミツバチ大量死」という問題です。ネオニコチノイドとは農薬の名前なんですが、僕もあまり知識がないので、まずこれはどういうものなのかご説明いただいてもいいでしょうか。


ネオニコチノイドは便利な農薬だが…

堤:舌を噛みそうな名前ですけれども、ネオニコチノイド農薬というのは殺虫剤の一種です。これは世界で一番売れている殺虫剤の一つで、100カ国以上で使われている世界的ベストセラーの商品なんですね。作っているのは世界三大農薬大手のバイエル、シンジェンタ、それから住友化学さんとかが作っているんですけれども、なぜこんな売れているのかというと、虫にはよく効くけれども人には安全ということなんです。ネオニコチノイドという名前の通り、タバコのニコチンに似たような形で神経に作用する毒なんです。これは日本でもよく使われていて、いちばんよく使われるのは田んぼですね。他にも果物や野菜、それから松が枯れるのを防ぐために幹に直接注入したりもします。他にも家を作る建築材料に使われたり、ベッドのノミ取りにも使われています。

速水:ここ10~20年で普及してきているものなんでしょうか。

堤:そうですね。90年代から出てきて世界に広がったんですけれども、虫の神経を攻撃する害虫対策として出てきました。水に溶けて土に染み込み、一度使うと何年も残るということ。それから植物の根や葉まで浸透するので非常に効果が強く使いやすいということでよく使われているんですけれども、結構問題もあります。例えば、すごく中まで浸透するので野菜なんかは洗っても落ちないんですね。体に入ってしまうと、脳だったり胎盤を通り抜けてしまうという報告なんかもあって、問題だと言われているのと、非常に強力なので害虫以外の生物も殺してしまって、生態系に狂いが出るということがあったり、今日のテーマなんですけれども、蜂の大量死と関係があるということで問題になっています。

速水:ネオニコチノイド農薬とミツバチの大量死は因果関係があるということなんでしょうか。

堤:そうですね。90年代の後半からアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本や中国でミツバチが急激に減ってしまったり、それから蜂群崩壊症候群といって、蜂が急に姿を消してしまうという現象が現れ始めたんですね。ヨーロッパなんかではミツバチの3割がいなくなってしまったり、ドイツは8割がいなくなってしまったんです。それで色々調べたところ、どうもネオニコチノイドと関係があると。蜂の神経に入ってしまうので、巣に戻ってこれなくなるんじゃないかという報告が出たんです。それで EU では2013年に一部、2018年には全面禁止をしました。スイス、韓国、オランダ、ブラジル、カナダ、台湾なども後に続きました。アメリカの場合は、中央政府はこれは関係ないと言っているんですが、地方政府の法律で禁止する動きが出ています。また、アメリカでは養蜂家や消費者団体がアメリカ環境保護局(EPA)を相手取って提起した裁判の結果、ちょうど2ヶ月前にネオニコチノイド系農薬製品の12種類が登録取り消しされました。そういう形で各国で禁止の方向に向かっています。
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速水:そのような状況の中で日本はどうなんでしょうか。

堤:日本は、まず農水省の立ち位置としては濃度が低いから安全ですよということ。それから蜂の大量死と因果関係は直接ありませんという立場なんですね。ただ、金沢大学の山田敏郎先生という教授がずっと調査をしていて、使う時の濃度が低くてもネオニコチノイドが残留した餌を食べたり、ネオニコチノイドで汚染された水を飲んだミツバチが神経をやられて巣に帰れなくなる。たとえ濃度を100倍に薄めても12週間後に蜂が死んでしまったと、ヨーロッパと同じ調査結果を出したんですね。けれども農水省は立ち位置を崩さず、2013年にネオニコチノイドの農薬残留基準を2000倍に引き上げたんです。その後2015年、2019年にも大幅に緩和をしてきたということで、依然として日本は規制緩和の方向に進んでいます。日本でいちばんネオニコチノイド系農薬が使われているのは、実は田んぼなんですね。カメムシという虫がお米を吸うと黒い点が残るんですが、そのお米は消費者が見た目が悪くて嫌がるからということで、検査の時に跳ねられて安くなってしまうんです。だから農家さんも仕方ないので使っているわけです。


消費者が声を上げれば変わっていく

速水:その黒い点は、見栄え以外の問題って特にないんですか。

堤:ないんです。私たちがきれいなものを求めるからそれをやっているだけで、味も品質も変わらないんですね。しかも今は機械で全部取り除けるので、実はもう使う必要はないんです。けれども検査体制自体が昔のままなので、これは農水省が検査体制を少しアップデートすれば変えられることではあるんですね。お役所は昔と同じことをルールにのっとってしっかりやるところなので、消費者の声が大きくならないと変わりません。消費者の意識というのはすごく大きくて、黒い点が付いていても味と質が変わらないから買いますよという消費者が増えると変わってくるということがあります。

速水:日本人は大正時代の米騒動のように、食べ物に関しては声をあげる民族だというところがあると思うんですよね。皆さんが今でも主食として食べているお米の安全って大事じゃないですか。農薬の危険性みたいなことというのは、消費者が声をあげていくことが変化のいちばん早い道かもしれない。

堤:それはすごく大きいですね。実は最近日本で大きな変化が二つありました。一つは、日本で年間50件位蜂の大量死が起こっているということで、農水委員会で野党議員が追及したんですね。それで当時の齋藤農水大臣は、じゃあ少し何かしましょうということを約束してくださって、2年かかりましたけれども、ようやく安全評価の対象に蜂を加えましょうということが発表されました。世界の流れからはものすごく遅いんですけれども、ずっと規制緩和をしてきた日本にとっては、これは大きな一歩だなと思っています。もう一つは長野県松本市でネオニコチノイド農薬の空中散布をずっとしていてたのですが、空中散布しているそばで子どもたちが体調不良になって病院に運ばれたりとか、いろいろ問題があるので一部の市民や市議が反対していたんですね。でも市長はけんもほろろで、ずっと対応されなかったんですけれども、今回空中散布が凍結されたというニュースが入ってきたんです。選挙で市長さんが代わったんですね。

速水:今年3月から松本市長代わりましたよね。臥雲義尚市長です。実は僕 NHK で「NEWS WEB」という番組をやっていた時の担当ディレクターなんです。その後立候補したのは知ってたんですけれども、今年当選して皆が「おおっ!」てなってたんですけど、やっぱり首長が代わることで政策が大きく変わる事ってあるんですね。

堤:ものすごく変わりまして、特にこの地域で農薬を撒くことや、地域の給食をどうするとか、地域の食の安全だったり、そういうものってやっぱり首長さん、それから地方議会の力というのはものすごく大きいんですね。今回は“凍結”ですけれども、これは大きな一歩です。自分たちの住んでいる地域でこの農薬は使わないでもらいたい、別な形で対応してほしいということを諦めずにずっと伝え続けて、それが女性市議さんに届いて、彼女が地方議会でずっと訴えて、かなり孤立してたみたいなんですけれどもずっとやり続けた。やっぱりそういうことは地方議会を変えるんですね。だから地方選挙とかみんな行かないんですけど、それはもったいない事なんですね。


ミツバチは生態系の維持に重要な枠割を果たしている

速水:地元の声は地元の地方議員のほうが声が届きやすいかもしれないですね。ミツバチの話に立ち返ると、ミツバチって僕らの生活にどう役立っているのでしょうか。

堤:ミツバチはすごく大切な存在で、全ての植物の1/3はミツバチが受粉をしてるんですね。だからミツバチがいなくなると人間も滅びるんです。

速水:受粉という活動は生態系の一つとしてミツバチの役割が非常に重要だということですね。

堤:ミツバチを殺してしまうことによって生態系が崩れる。他の生き物もたくさん死ぬんですね。生態系が崩れたことのしわ寄せというのは必ずいろんなところに出てきて、私たちに戻ってくるんです。

速水:例えば最近よく聞くのが、ニューヨークとかロサンゼルスみたいな大都市部でも都市型のハチの育てる。実は東京でも行われているんですけれども、そういう流れもハチを見直そうということですね。都市でミツバチを飼うって、ちょっと規制もあったんですが、規制緩和の流れがあるらしいですね。

堤:中国なんかはミツバチが減ってしまったので、人の手で受粉をしたりしてます

速水:それ大変ですね(笑)

堤:それからアメリカではハーバード大学がロボットミツバチの開発をしているんですね。

速水:それも凄い話ですね(笑)

堤:ロボビーという名前なんですけれども、これがハチと同じような動きをするんです。だからハチが絶滅してもロボビーがいるよという、何か科学技術万能論みたいなものがあって非常に恐ろしいですね。

速水:ソフトバンクの試合でロボットが応援してるじゃないですか。ソフトバンクのPepperと犬のロボットSpot。あの二つが応援歌を歌っていて非常にシュールな光景で昨日騒ぎになったんですが、ロボビーにも同じ気持ち悪さみたいなものを感じますね。

堤:何かざわざわするものを感じますよね、ロボビーって。この間私が行った民間稲作研究所という栃木県の研究所では、農薬をまったく使わない畑の両脇がネオニコチノイドを使っている普通の畑だったんですね。真ん中の農薬を使っていない畑だけ稲の色が違うんです。いろんな虫やカエル、トンボ、チョウなどいろんな生物がたくさんいるのに、その両脇の畑には全くいないという、これは結構シュールな光景でした。だから、量や種類にもよりますが、農薬を使うことによって害虫だけじゃなくて土や水、生態系全体に与える影響があるんですね。アメリカなんかでもこういう考え方が消費者に増えてきました。「農薬は嫌だ」というのではなくて、絶滅危惧種保護法違反で訴えて、それでネオニコチノイド系農薬の承認を取り消させたというのもあるんですね。生態系や地球全体を考えて消費者が動き始めるということが、世界的な流れとして今起こっています。

速水:今日は皆さんに食材の選び方みたいな話を聞いてるのもそういう意図があって、僕らも結構変わっている部分あるんですよね。メッセージを読みます。「私は美味しければ黒くても気にしないけど。家のお米にも入っていた」という、ご飯をよそっている動画をあげていただきました。カメムシの食べた跡であろう黒い部分があるんだけど、まぁ平気だよねという声であるとか、一方で「ロボビーかっこいいな」っていうメッセージも来ています。確かにかっこいいというところもあるんですけど(笑)、生態系を彼らは作れるのかというと、またちょっと違うところがありますよね。

堤:そうですね、ロボビーはペットにしましょう(笑)

速水:また「まあそれはそうよ。人間に影響がないはずがない」 というメッセージ、まさに堤さんが話された生態系の影響って瞬時にわかるものではないじゃないですか。

堤:そうですよね。私たちも生態系の一部だから、やっぱり農薬を使って生態系や微生物を殺すと、今度は私達の腸内にもきっとそれは入ってくる。つながっているんですよね。

速水:「エゾオオカミが絶滅してしまった北海道では、エゾシカが増えすぎて農業被害作物を食べてしまい大変なことになっています」というメッセージ頂きました。何かが何かに作用し、さらに何かに作用するとなると、ちょっと想像がつかないレベルで生態系というのは変化していってしまうわけですね。

堤:本当にその通りですね。

速水:結論としては、ネオニコチノイド農薬、日本でもようやく規制の流れが出てきているということですね。

堤:かすか第一歩ですけど、日本の今までの経緯を考えると、実は大きな一歩です。それから松本市の空中散布が凍結されたことも含め、地方と中央の両方でちょっと朗報があったよということですね。

速水:農薬をどう使うか、生態系の話、そしてミツバチが僕らの生活に欠かせない、自然に欠かせないものであるという話、取り上げて行きました。堤さん、ありがとうございました。

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