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速水健朗

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「選挙」の楽しみ方

2020/6/24 (水)21:00
2020年6月24日Slow News Report



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速水:Slow News Report東京都知事選挙投開票まであと10日余りということで、今日は選挙を楽しむ、味わい尽くすにはどうすればいいかというテーマでお送りします。今日お話を伺うのは、長年選挙、候補者の取材をされてきましたフリーランスライターの畠山理仁さんです。取材でお忙しい中ありがとうございます。今回の都知事選は、現職がいる選挙で、無風なんていう言われ方もしています。今回の選挙、どこに注目しているんでしょうか。


史上最多22人が立候補している東京都知事選挙

畠山:今回はコロナの最中の選挙ということで、街頭演説の活動の自粛など、これまでの選挙とはかなり変わっているというところはあるんですけれども、その中でも過去最多の22名の方が立候補されたんですね。一般の報道では、いわゆる“主要候補”という方と“その他の候補”に分けられ、“その他の候補”の情報は選挙が進めば進むほど、ほとんど情報がなくなってしまいます。「22人もいると、そんなにたくさんから選べないよ」ということで、選択肢を絞っていくというのもメディアの役割の一つではあると思うんですけれども、ただ22名の方というのは、みなさん凄く高いハードルを越えて立候補されているんです。それぞれ訴えたいことがあって立候補されているので、そうした方々が出している政策や考え方、ものの見方というのは、絶対社会にとって何かしらのヒントになると思うんですよね。そのままは採用できないかもしれないけれども、もう少しみんなでブラッシュアップしていけばいいアイデアじゃないか、というようなことがたくさんあるので、そこを見てほしいですよね。

速水:選挙では一人を選ぶことになるんですけど、当選以外は全部無意味なのかと言うと、全然そうではないよということですね。

畠山:そうですね。選挙は数十億円の単位で経費がかかるイベントなわけで、このイベントをただ単に勝ち負けで終わらせてしまっていては民主主義の進歩はないと僕は思っています。やっぱり政策論争をする機会として選挙を使ってほしいなと思っていますね。

速水:議論の場として、その数十億円もの経費にみあったものにするかどうかというのは、報道のあり方であるとか、みんなの関心次第ということですね。ちなみに先程おっしゃった“高いハードル”というのは供託金のことですか。

畠山:そうです。供託金は都知事選の場合は300万円ということで、世界で最も高いですね。

速水:これはある一定の得票数を取れば返ってくるんですよね。

畠山:有効投票数の1割ですね。たぶん65万票くらい取らないと返ってきません。

速水:これを用意するのは楽ではないですよね。

畠山:コツコツ4年前からアルバイトで貯めて、それでも足りなくて借金をして出るという方もいらっしゃれば、いつか選挙に出ようと思って何年も貯蓄をしてきたお金をつぎ込んで出られる方もいらっしゃいます。

速水:300万って車1台分ですよ。

畠山:高級車1台分ですよね。

速水:僕の車だと10台分なんですけどね(笑)畠山さんは都知事選に限らず、市長選挙で、いろんな候補者の方、しかも世の中的には大注目という人ではない方などたくさん取材されていて、「黙殺」という本も出されていますが、今まで取材された中で面白かった候補者なんかはいましたか。


当選した“その他の候補”

畠山:選挙を政策論争や社会政策を共有する機会にしていこうということを訴えている候補者の方がいらっしゃいます。中川暢三さんというかたで、無頼系独立候補界のエースといいますか、いわゆる“その他の候補”にくくられてしまう候補者だったんですが、そういう候補者ってなかなか当選ができないんですけれども、中川さんの場合は当選してるんです。中川さんが選挙に初めて出たのが2001年なんですけれども、最初は参議院選挙、その次は長野県知事選挙に出たり、とにかくたくさんの選挙に出ていました。中川さんは会社員の立場のまま立候補しているというのが非常に珍しくて、有給休暇をとって選挙に出て、落選したら復職して、次の選挙があると有給休暇をとってまた出るということを繰り返してこいました。これは非常に大事なことで、政治家は有権者の代表なので、いろんな属性の人がいたほうがいいんですね。会社員は圧倒的に社会の構成員として多いわけですから。

速水:サラリーマン議員って、会社の理解とかすごい難しそうですけど本来いてもいいですよね。

畠山:会社によっては選挙に立候補するための選挙休暇というのを作っている会社もあったりするので、だんだんそういうのが広がっていくといいなと思っています。

速水:中川さんはそれを実現したわけですね。

畠山:そうです。中川さんは政党や組織の支援がなく、ご自身一人で選挙に臨んでいるので、やっぱりメディアの注目もほとんど集まらない状態なんですが、ただ彼がすごいのは、とにかく政策本位の選挙で行こうということで、毎回斬新なアイデアを出して選挙戦を戦っているんです。いろんな面白い政策があるんですけれども、例えば長野県知事選挙に出た時は、借金返済のアイデアとして、県庁の建物を売ってしまって、県庁職員は家賃を払ってそこで仕事をするというものがありました。長野県は毎年借金を返すために債券を発行して、それを借金返済に充てていたんですけれども、県庁の建物を売ってしまえば債権を発行しなくてすむというアイデアです。それから投票に行った人には1万円のクーポンをあげるというものもありました。投票率が低いのはよくないということですね。それから選挙に出て落選した候補のうち、ある程度の票を取った人はその自治体の職員として3年間の期限付きで採用するというアイデアもありました。これは政治家のなり手が少ないということで、挑戦した人には職員として頑張ってもらって、また次の選挙に出てもらえばいいということなんです。この視点もちょっと新しいなと思います。

速水:今の政策を聞いただけでもデタラメではなくて、みんなに参加して欲しいとか、選挙自体の価値を底上げするみたいなものがある気がしますね。

畠山:そうですね。政策本位の選挙をやるので、その活動を全国に広げたいという思いがある人なんですよね。中川さんは過去に地元の兵庫県加西市で2回当選していますが、そのときの中川さんのいろんなおもしろい政策の中で、市長自ら税金滞納者の家を回って、税金を徴収するというものがありました。本当に実践をしたのですが、やっぱり市長がわざわざ「すいません、税金滞納してますよ」と来ると、やっぱりすんなり払ってもらえるという(笑)

速水:(笑)これは払わざるを得ないなという、効率がいいということですね。

畠山:中川さんは実績も本当にすごくて、6年間で加西市の借金を33%削減しました。それから途中で不信任決議を可決されて一回失職してしまうんですけれども、その出直し選挙でまた政策本位の選挙を訴えたら、有権者の方が中川さんを応援しようと言って、中川さんはまた当選してしまったんです。でも3期目では落選してしまうんですけれども。

速水:アイデアマンであり、民意とは何かということをちゃんと問いながら政治をしているという中川さんの姿勢、伝わりました。ちなみに中川さんは今どうしているんですか。

畠山:今回都知事選に出るんですか?と聞いたら、「ちょっと考えたけど今回は1回お休みでまた違う自治体の選挙には出るかもしれない」ということを言ってました。

速水:非常にフレキシブルな考え方の方なんですね。後半は畠山さんの著書「黙殺」の中でも、主要な取材対象として取り上げてきましたマック赤坂氏について触れていきたいと思います。「黙殺」のなかでは、泡沫候補という言い方に対して疑問を呈されていますね。

畠山:冒頭でもお話しましたが、選挙になると主要候補とその他の候補という明確に大きな溝が、報道でできるわけです。

速水:「その他〇〇人の方々も立候補されています」みたいなことで流されてしまうという…

畠山:ほとんど名前が一瞬テレビの画面に映っておしまいみたいな感じになってしまいます。まあそれは編集の自由というのはあるのでそれは仕方がないかと思うんですが、でも最初に申し上げましたけれども、宝の山というか、選挙で立候補してくれる人がいなくなると無投票になっちゃって投票して選ぶ権利すら奪われてしまうんですね。なのでやっぱり立候補してくれる方々を大事にしないといけません。「勝ち目もないのに立候補して」って叩いていると、どんどんなり手が少なくなってしまいます。多様な意見を持っている人が選挙に出なくなるということは、多様である私たちの代表を選ぶ選挙で選択肢がものすごく偏ってしまう。そうすると投票率も下がってしまう。実際に地方議会だと20%ぐらいが無投票で決まっちゃうんですよね。選べないという状態なんです。


マック赤坂さんに密着取材をして…

速水:畠山さんは「黙殺」という本の中で、そういったことをマック赤坂さんの取材を通して気づいたということなんですが、マック赤坂さんのことは皆さんご存知でしょうか。この番組の20代の若いディレクターも知っているとのことでしたので、皆さんもご存知のかとおもいますが、マック赤坂さんはどういう方なんでしょうか。

畠山:渋谷なんかで、選挙のたびにスーパーマンの格好とか天使の羽をつけたりだとか、六十歳超えている方なんですけれども、そのおじさんがエアロビクスのタイツみたいなのは履いて、交通整理のライトみたいなのを持って音楽に合わせて踊って選挙運動をやってるという人です。

速水:皆さんもきっと東京のどこかで見たことある方多いですよね。

畠山:そうですよね。変な人が変な事をやってるというので SNS にあげた事があるという人も多いと思うんですけれども、彼のことは、2007年に最初に立候補してからずっと追いかけています。なかなか演説が始まらないんですよね、ずっと踊っているから。どうして踊ってるのかということを何回も僕は聞いていくんですけれども、やっぱりそこには泡沫候補という扱いに対する反抗心というのがあって、一番最初の選挙は、普通のいわゆる政治家的な格好をして、政治家的な街宣車で、政治家的な街頭演説をして選挙を戦ったんです。けれどもメディアには全く取り上げられない。やっぱり政党とか組織の支援がないと、真面目な格好で真面目なことを言っても取り上げられないので、じゃあ自分の力でどうにか注目してもらおうということで工夫を重ねた結果が、あの変なおじさんが踊っているというスタイルだったんですね。

速水:本を読まれた方はご存知かもしれないんですけれども、無頼派も無頼派で、下半身出しちゃったりするようなところもある方。僕のイメージではやり過ぎたりする、目立ってナンボという選挙の代表なんですけど、その方にずっと密着して取材しているうちに、メッセージが強くあるということが分かってきたという話も本の中にはありますよね。彼は何を主張していたんですか。

畠山:とにかく笑うことで社会を幸せにしようということですよね。顔、表情を変えるだけで脳内で気持ちいい物質が分泌されて幸せになると。だからマックさんはよく笑われるんですけれども、彼の意識からすると笑われているというよりも、みんなを笑わせているという意識がすごく強いんですね。

速水:まあその主張は別に今代弁されなくてもいいんですが(笑)、むしろずっと取材されている中で、泡沫候補といわれている人たちの意見も大事なんだということに気づいていくということなんですね。

畠山:そうですね。本当面白いですよ。だって政策で笑わせてくれるってなかなかないじゃないですか。すごいんですよ、眉間にしわを寄せて歩いたら罰金3000円とか(笑)

速水:そういう新しい法律、条例を大真面目に主張されているんですね。

畠山:大真面目なものもあるし、笑わせるための政策も入っているし、この人はどっちなんだろうと思うんですけれども、それはやっぱり注目されるための方法の一つでもあるんです。世の中のためになることをしたいというのは大元にはあるんですよね。社会の常識は「政党とか組織の支援がない人は最初から勝ち目がない人だ」ということで、報道では「今回は何々さん圧勝ですね」で終わっちゃってるんですけれども、でも選挙って実はすごい制度で、大きく逆転する可能性っていうのがあるわけですよね。収入ゼロの人も年収1億円の人もみんな持っているのは一票しかない。だから本当にガラッと変わる、それはすごく良い変化もあれば、悪い変化がいきなりやってくる可能性もあるというすごい制度なんです。けれども あまり大きな変化が起きると困るっていう人たちもいて、なかなか注目が集まらなかったりするわけです。


選挙を政治家とのコミュニケーションの機会に

速水:泡沫候補の扱いって非常に関心が薄かったりするけれども、先ほどの中川さんだとか、ずっと選挙に出続けてきたマック赤坂さん、そこから見える選挙制度、メディア報道など、決して黙殺していいものではない。そこから学ぶものとかあるということですね。最後にお伺いしたいのは、多数の候補者が立候補している今回の都知事選、今の時点でも主要な方々とそうじゃない方々に分けて報道にも差があります。そんな中で僕たちはどこに目を配らなきゃいけないのでしょうか。

畠山:やっぱり一度は選挙公報をみて、全候補が訴えているものを一度見てみる。この政策は使えるとか、社会で共有してもいいというものがあれば、それは他の候補者にも伝えてあげること。例えば当選しそうな候補者にも「この負けそうな候補の政策はとてもいいと思っています。」ということを提案してあげることで、当選した人が自分たちにとって望む政治をしてくれる可能性が出てきます。特に選挙の時期って政治家のガードが下がるので、いろんな人の意見を聞こうとしてくれるんですよね。ですから、選挙を政治家とのコミュニケーションの機会として利用してもらいたいなと思います。

速水:最後に、本当に時間がないんですけど、これ聞き忘れちゃったんですが、マック赤坂さんの現状はどうなっているんでしょうか。

畠山:去年の4月に港区議員に当選して、 6月の議会は出たんですが、その後体調崩して議会を長期で休んじゃったんですよね。投票した人達は今までとは違う議員が誕生して、大暴れして欲しいと思っていたんですが。

速水:ありがとうございます。今日はフリーランスライターの畠山理仁さんに選挙の楽しみ方についてお伺いしました。
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