廃炉はいつ終わるのか

2020年6月10日Slow News Report



速水:Slow News Report 昨日に引き続きフロントラインプレスの木野龍逸さんにお越しいただいています。昨日は汚染水の海洋流出の話を伺いましたが、今日はその続き、「廃炉はいつ終わるのか」ということなんです。報道なんかでも40年はかかるとされる福島第一原発の「廃炉作業」という言葉、ある種紋切り型のフレーズになっているんですが、このフレーズに関して木野さんはどうお考えでしょうか。


実はまだ廃炉作業は始まっていない

木野:基本的には非常に無責任なものの言い方ではないかなと思っています、結局今やっている作業は、昨日のお話の汚染水の処理の問題も含めて、事故処理作業がまだ続いていると言った方がいいと思うんです、百歩譲ってリスク低減のための作業とも考えられるんですけれども、だとすると未だに廃炉作業にはとりかかれていない訳です。もう一つは「廃炉」という言葉を使っているんですけれども、最終的に廃炉の状態がどういうことかという定義をしていないんですね。定義をしていない以上は目標といってもどうにもなるわけです。そういうものに対して「40年で廃炉作業が終わる」とか「目標」にするという言い方は非常に不誠実ではないかなと僕は感じています。

速水:となると、今あの場所では具体的に何が行われているんでしょうか。

木野:まず汚染水を含めて、放射性廃棄物の処分の目処を立てる計画を立てたり、メルトダウンした原子炉の中がどうなっているかの調査をしたり、あとは関連する機器の保守点検作業であるとか、そういうことを進めている状態です。

速水:なるほど。今情報を集めて調査している段階ということですよね。

木野:そう言って差し支えないと思います。

速水:となると事故処理にあとどれくらい期間がかかるんでしょうか。

木野:それは僕が知りたいところなんですけれどもね。間違いなく30年40年で終わらないだろうというのが関係者の見方なんですが、じゃあいつ終わるかというのはちょっと目処がたてられる状態ではありません。


廃炉には人材不足の危惧も

速水:廃炉作業は非常にリスクのある職場なわけですけれども、今人手不足と言われている中で、人が足りているのでしょうか。

木野:人手に関しては、結局東京電力が民間企業でもあるので、正確なところが情報として出てこないんですね。ただ人伝いに聞くところだと、なかなか専門職の人が集まりにくくなっているという話は聞きます。これは被ばく線量の関係もあるんですが、これから原子炉建屋とかの中の調査が本格的に始まるとなると、なおさら専門職の人が必要になるんですけれども、本当にそれが確保できるのかというのは今のところまだ未知数です。

速水:原子力関連は今までとはちょっと状況が違っていて、これを学ぼうという人達ですらモチベーションとして新しい技術、新しい世界を築くんだという状況ではないわけです。やる気があるかないかみたいなことはすごく大事なわけで、そこの点でもちょっと心配がありますよね。ツイッターのメッセージなんかも見ながらいきたいと思います。「実際に作業をやっている方々は東電やもしくは何かの関係の方なんですか?それとも一般の方なんですか?」という疑問が来ているんですが。

木野:当然東電の方もいらっしゃるんですが、後は地元の企業の方、そして一番大きいのは建設関係のジョイントベンチャーです。あと原子炉関係に関しては日立や東芝が入っていますね。

速水:今のメッセージはこういうことかと思うんですが、東電は原子力発電所を福島に関しては運用を失敗した会社なわけです。そこの会社に無尽蔵にお金をかかるものを、引き続きやらせるのか、という危惧みたいなものがあると思うんです。

木野:まさに同じような危惧を僕も昔から感じているんですけれども、東電以外でやるとなると国がやるという話になるんですが、事故の直後は東電が原因者なので、それを国が肩代わりするのはどうかという議論がありました。それで、先ほどの40年で廃炉という計画を作った中長期ロードマップには、東京電力自らが責任をもって行うことが原則と書かれているんです。政府がそう決めているんですね。

速水:もう一通メッセージを紹介します。「事故の有無にかかわらず、原発には廃炉ビジネスなるものがあるそうですね。廃炉には何十年もかかることから、たくさんの業者、地域の経済が潤うそうですが、今後エネルギー転換がうまくいけば廃炉ビジネスも活性化しそうな気がしています。どうでしょうか。」 というビジネスとしての廃炉の質問です。

木野:福島第一に関しては作業が継続的に数十年は続くので、それに関係する企業関係者はそういう意味では廃炉ビジネスに関わっていると言えるとは思います。

速水:廃炉ビジネスといった場合、皆さんが思うところはちょっとずつ違うのかもしれないんですが、僕なんかはむしろ競争が発生して、お互い切磋琢磨するようなビジネスになっていた方が健全なんじゃないかと思うんです。

木野:そう思います。ただなかなか現場はそうなっていなくて、昔からのしがらみとか関係性で発注がありますし、一時期東京電力が競争入札みたいなことをやったんですね。そうしたら、設定金額がそれほど高くなったかったせいもあると思うんですけれども、全体にコストが下がる中で作業が雑になったり、ミスが増えたりして、結局やめてしまったという経緯があるんです。


廃炉はいつ終わるのか

速水:なるほど。そうそう考えるようにはうまくいかないということですね。おそらく過去のノウハウなんかも、あるようでないわけですよね。ちなみに、廃炉はいつ終わるのかと聞かれたらどう答えますか。

木野:例えばチェルノブイリの 事故に関しては、100年後までは今の状態とうことで、カバーをしておいて、その間に放射量が減るのを待つと。廃炉作業はその後にやるわけです。

速水:あれ自体が1980年代から40年以上経っている状況で、非常に時間が掛かるわけですね。ちなみにチェルノブイリ以外にも世界にはもう使っていない原発ってたくさんあると思うんですが、廃炉に成功している事例はあるのでしょうか。

木野:日本でも東海発電所という古い原発の廃炉作業は進めています。海外でももちろん使わなくなった原発の廃炉作業というのはやってはいるんですが、事故を起こしてメルトダウンした原発できちんと廃炉が終わったものはありません。事故があった原発、表に出ているものでスリーマイル、チェルノブイリ、福島ですけれども、何も廃炉作業は終わってはいないですね。


廃炉のビジネスの可能性

速水:なるほど。参考になるものがなかなかないということですね。引き続きメッセージを読みたいと思います。こんな質問が来ています。「日本は廃炉をやらねばならない宿命なのだから、世界中の原発をクロージングするビジネスを作り出す強みになる。一石二鳥だと思う」 という意見なんですけれども、これはどうでしょうか。

木野:そういう考えもあると思います。原発そのものが増えている国もありますけれども、これから閉じるところも増えていきますし、しかも一箇所につき数十年の作業になるので、それなりの市場規模になるのではないかと言われることもあります。

速水:ただ現状としてはまだ手をつけていない状況なわけですよね。どのくらいのタイムスパンで考えればいいのでしょう。

木野:前例という意味ではチェルノブイリの考え方が参考になるんではないかと思っています。

速水:時間をかけながらそれをまずは置いておいて、放射能が下がるのを待つということですか。

木野:ただこれを言うと、政府や経産省の関係者であるとか東京電力は、何もしないのは無責任であるという言い方をするんです。けれども一方で廃炉の定義も決まっていない中で、むやみに人材とお金を投入していくということが本当にいいのかどうかというのはちょっと疑問を感じています。地元の人たちからは早くあそこを何とかしてくれという要望は常にあるので、手をつけないわけにはいかない。ただ一方で、完全にあそこが30年40年で更地にできるかというと、それは明らかに不可能です。ですので、その辺の落としどころをどうするかというのは、今よりももっと透明性を持った形で検討して議論をすべき話ではないかと思います。

速水:何もしないっていうのも選択肢のひとつだというお話ですね。その間に研究が進むということを期待してしまうんですが、世の中の科学技術がどんどん進んで、良い解決策に近づいていく可能性もある。また、ちょっとネガティブに考えると、危険な作業だし、ビジネスとして原発が増えていくという時代ではなくなっているのでは、新しいイノベーションを起こそうという優秀な人達が入ってくる業界にならないので、誰も手を付けられなくなっていく可能性と、両方あるかなという気がするんですが。

木野:まず後者の方からお答えしますと、誰も来なくなるのではないかという話は電子力関係者はよくそういう話をします。ただそうは言っても、日本だけで54基、世界中では何百もあるわけで、それがこれから閉鎖されていくと考えると、やっぱり市場規模はある程度あるのかなかと思います。それからもう一点、何十年と置いておくと言っても、その間何もしないわけではなく、機器のメンテナンスは必要ですし、調査もずっと必要なわけですね。そう考えると、できるところから手をつけていくという作業をまず計画した方がいいのかなと思うんですけどね。


40年後の福島第一原発は…

速水:地に足をつけた形での対処。もうちょっと今起こっていることをちゃんと見つめましょうよということかなと思います。そして最初に40年かかるという話から始まったわけですが、実際今のやり方を続けたとしての40年後の福島第一原発はどんな姿になっているのでしょうか。

木野:敷地は事故直後に比べると舗装したりして綺麗に見えるようにはなっているんですが、原子炉の建屋に関しては今と大きく姿は変わらないんじゃないかなと思います。

速水:なるほど。そのこと自体がいちばん受け止めなければいけない現実なのかなという気もします。木野さん、ありがとうございました。


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