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速水健朗

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コスタリカの法律を変えた車椅子の女性と日本人

2020/5/18 (月)21:00
2020年5月18日Slow News Report


速水:スローニュースリポート。今日はフロントラインプレスの柴田大輔さんとお送りします 。今日は日本とコスタリカを舞台にしたリポートということなんですが、テーマは「コスタリカの法律を変えた車椅子の女性と日本人」。コスタリカ人の車椅子の女性、ウェンディさんとはどういう方なのでしょうか?

柴田:ウェンディさんは筋ジストロフィーという、全身の筋力が徐々に低下する病気による障害者です 現在はコスタリカ南部の街で家族と離れて、介助者のサポートを受けながら一人暮らしをしています。 介助者の自立生活に必要なサービスを、障害者が中心となり提供する自立生活センターの代表を務めています


ウェンディさんが成し遂げたこと

速水:ウェンディさんのことはヤフーニュースの特集で記事になっていますが、チェゲバラよりすごいと称えられているんだということをおっしゃっていますが、ゲバラといえば南米の英雄じゃないですか。それよりもすごいというのはどういうことなんでしょうか?

柴田:ウェンディさんが成し遂げたことというのが、コスタリカの障害者にとってまさに革命的だったということがあります。障害者自立促進法、通称自立法と呼ばれているんですが、2016年にウェンディさんが障害者の仲間と共にそういった法律をコスタリカで主導しました。コスタリカでは普通、障害者の方は家族のケアを受けながら、家族と共に暮らすのが一般的でした。そうした中では、家族の手を借りるか、自分でお金を払って介助者を雇うことで、自分がやりたいことをやらなければならなかったんですね。そうすると必然的に自宅での生活というのが長くなってしまって、社会に参加したり、自分の能力を活かす機会というのが限られてしまっていたということが背景にあります。自立法というのは障害者に対する公的な介助サービスを提供する法律なんですね これによってお金があるなしに関わらず、どんな障害者であっても、誰もが公的な介助を受けられることで、自由に行動することができるようになりました。

速水:これはつまり、車椅子の人が外に出て、例えば買い物であるとか、通勤であるとか、様々なことをして当然である。それを法律で支援することが定められているとういことなんですね。

柴田:そうですね

速水:そのためにはいろんなインフラを整備したり、公共施設なんかでも相当手を加えたりしなきゃいけないですよね?


ウェンディさんが日本で見たもの

柴田:コスタリカという国は先進国ではないので、農村に行くとバリアフリーという状態にはけっこう程遠い状態があるんですね。ここで重要なことは、ウェンディさんが今働いている自立生活センターという組織がありますが、このセンターは、障害者が中心になって、障害者の自立生活をサポートする組織なんですね。障害者が地域で生活するために必要な介助者の派遣ですとか、相談なんかを受けているんですけれども、それと同時に障害を持った人がどうすれば地域で暮らしやすくなるかということを、行政や地域住民に対して啓蒙活動をするというのも大きな役割となっています。
ウェンディさんが日本に初めて来たのは2009年です。それまでウェンディさんは、他の障害者の方と同じように田舎の町で両親のケアを受けながら家族と暮らしていました。そういう状態が35歳まで続いたんですね。高校までは、両親や友人など、周りのサポートに支えられながら高校を卒業することができました。彼女は大学へ進学して医師になるという夢があったんですけれども、医学部のある大学が自宅から遠かったので、進学するためには進学先で両親のサポートを受けるか、有料の介助サービスを受けなければならなかったんですね。しかし、両親も自分の仕事や生活がある中で、そういったことができず、有料の介助サービスも金銭的に難しい状態でした。ウェンディさんは能力はあるのに夢を諦めなければいけなかったんです。
そうした中で2009年に兵庫県西宮市にある NPO 法人メインストリーム協会という日本の自立生活センターが、主に中南米の人に向けた自立生活研修というのを開きました。それがきっかけでウェンディさんは日本に初めてやってきました

速水:ウェンディさんはどんな方なんでしょうか?

柴田:障害者運動を引っ張っている方ですので、おおらかですし、すごく自信に満ち溢れて優しい方なんですね。けれども初めて日本に来た時の彼女を知る方に話を聞くと、本当に大人しい人だったそうです。
彼女は「障害者というのは同情を受ける存在ではないんだ」というのが日本にきて分かったと言いました。というのは、日本で、障害者の方が介助者のサポートを受けながら一人暮らしをする姿を目の当たりにしたからです。そこでは誰に気兼ねをすることもなく、出かけたい時に外へ出かけて、食べたい時に食べたいものを食べるという生活をしてました。

速水:そんな日本でのいわゆるコスタリカとの違いみたいなものを目の当たりにした部分も大きかったということなんですが、後半はこの一連の出来事に関わった日本人について伺っていきたいと思います。




【コスタリカでウェンディさんと一緒に活動している井上武史さんのコメント】

僕は自分の Facebook ページで「法律が通った、すごいことしちゃった」とつぶやいたと思うんです。(ウェンディさんは何かおっしゃっていましたか)泣いてたかな、肩の荷をおろした感じでしょう、全ての人が。法律が出来た時は嬉しかったけど一瞬になんですよ。ただ そういう生活をできるようになったというのは、「やった!」じゃないんですよ。もっと実のある満足感が僕の中にはありましたね。それまでは家にいて、お母さんが「いいよ」という時でないと車椅子で街中に行けなかったのが、今は介助者の人がいて自分が行きたい時に行けるような状況になったという、それだけでも本当にすごいことだと思っていました。今年の2~3月に(コスタリカに)行ってる間には、そういう事業がどんどん広がって、介助者の人も新たに増えたし、そういう人たちが事務所にごった返していました。障害者の人ももちろんいるし、ちょっとすごいですよ、それは。


速水:このお話をしてくれた井上さんという方はどういう方なのでしょうか。

柴田:井上さんは、今はコスタリカで障害者の自立生活を支援するプロジェクトのマネージャーとして働かれています。井上さんはウェンディさんが日本に来る前にコスタリカで既に知り合っていて、それ以来二人三脚でずっと活動を続けた方です。日本では自立生活センターのメインストリーム協会の職員でもあります。この自立生活運動、障害者がより自由に自分らしく生きるためというこの運動には、井上さん自身もいろいろ紆余曲折を経て出会ったと言っていました。すごく熱量の高い方です。これからはコスタリカだけではなく、まだ未整備な中南米全体に向けて、ウェンディさん達と一緒に自立生活というものを広げていきたいとおっしゃっていました。

速水:一方で、日本はバリアフリーであるとか、障害者の支援が非常に遅れているという印象も強いのですが、実際のところはどうなんでしょうか?

柴田:いわゆる福祉先進国と言われている北欧ですとか 自立運動の発祥のアメリカと比較すると、やはりそういった面で遅れているところはあります。また障害をもった子供たちが健常者の子供と教育現場が分けられているというところでも、機会の平等と言う観点でかなり遅れている部分があると僕は思います。


障害があっても、能力を活かせる社会に

速水:一つメッセージを読みたいと思います。「障害者が自立できないと家族の負担も増えてしまうよね。必ずしも家族仲が良いとは限らないし、一人の人間として生きていくための支援も必要だと思う」 今日の話もまさにそうですよね。みんな同じ家族を持っているわけではないし、一人暮らしできるような状況のためには社会が支える、その一つの目標が自立ということですよね。日本の介助制度にウエンディさんが驚いたという話もあるということなんですけれども、どういうことなんでしょうか?

柴田:欧米に比べて遅れている面もある日本なんですけども、日本の中でも歴史的に障害を持った当事者の方が声を上げて行動することで、自身の生活に必要な制度というものを勝ち取ってきたという歴史があります。まさにそのひとつがウェンディさんが驚いた 公費による介助制度ですね。どんな障害を持った人でも、自分の生活に必要な身の回りのサポートを受けることができるというものです。例えば手が不自由なのに自分で頑張ってご飯を食べなきゃいけないとか、洋服を着替えないといけないとか、そういったことを自分でする必要がないんだよ、というのがこの自立生活運動の思想の一つにあります。その時に自分のサポートをしてくれる介助者に自分で決めたことを指示することで、介助者が自分のことを代わりにやってもらうわけですね。

速水:日本の国会には舩後靖彦議員、そして木村英子議員二人の重度障害を持つ国会議員が仕事をされているんですが、このお二人の登場を見ていて感じることはありますでしょうか。

柴田:かつてウェンディさんがそうだったように、重い障害のある人ほど社会に参加しにくいということがあると思うんですね。重度障害者のお二人が国会議員という、社会的にも大きな責任を担う立場になったということは、できないということが多いという障害者のイメージをすごく変えたと思うんです。また、それによって国会にスロープができたり、言葉を発することが難しい舩後議員が質問の代読が認められるようになったんですね。このように社会の側の障壁というものが取り去られることで、障害のある方が能力を発揮できる場面がすごく広かったということが証明されたんだと思いますね。

速水:今日の一連のお話を伺って、今まで考えていた「自立」という言葉をなるほどと唸りながら改めてこの問題を捉えることができたような気がします。柴田さんありがとうございました。


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