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速水健朗

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種苗法改正

2020/5/14 (木)21:00
2020年5月14日Slow News Report



種苗法とは

速水:Slow News Report今日は堤未果さんによるリポートです 。今夜のテーマは「種苗法改正」です。政府は3月3日、種苗法改正案を閣議決定し今国会に提出、そして2021年4月の施行を目指しているということなんですが、種苗法とはどんな法律なんでしょうか。

堤:種苗法というのは種子法とよくごちゃごちゃにされるんですけれども、これは全然違うんですね。種子法というのは、主要農産物種子法といいまして、お米とか大豆、麦などの私たちの主食については種の開発予算を都道府県が出すという法律なんです。都道府県の公共予算が付くと、農家さんは主食の種を安く買えるという仕組みになっています。一方で種苗法というのは、種を開発している人の権利、これは種の特許のようなものだと考えてもらえればいいと思います。種を開発した人の知的財産権という権利を守る法律のことです。

速水:種苗法はどういう改正が行われるのでしょうか。

堤:種を開発した人がその品種を登録すると、他の人が勝手に売ることは違法になるんですね。でも自家増殖といって、農家さんが買った種で育てた実から取った種を、次の年にまた植えることについては農家さんの権利だということで、一部を除いて原則 OK と今まではしていたんです。農家さんの権利と開発者さんの権利のバランスをとっていたわけです。でも日本の農水省は種を取ってはいけないという例外リストを今増やしていて、種取りしたい人は開発者に許可を取ってお金を払うルールにしましょう、登録している品種に関しては基本的には種を取ってはいけないというように変えましょうというのが今回の改正です

速水:例えば僕らがダウンロードした音楽を家で聞いたり、買った本を家で読んだりするのはもちろん許されているし、作り手にお金が渡るシステムとして著作権法があるわけですけれども、種も品種改良とかが常に行われていて、作った人の権利が守られるわけですね。

堤:その通りです。種の開発、品種改良はすごくお金がかかります。登録するのもお金がかかるし、開発するのもお金がかかる。せっかくお金をたくさんかけて開発しても、農家さんがどんどん、著作権でいうところの“コピー”されてしまうと、開発している方は儲からないし負担も大きいし困る。だったらちゃんとお金払ってよという考えですね。


種苗法の改正だけでは海外流出をとめられない

速水:海外への流出を防ぐという側面もあるんでしょうか。

堤:海外に日本の果物の種を勝手に持って行って、作っちゃう人がいるわけですね。例えば日本のシャインマスカットとかさくらんぼとかいちごとか、こういう果物の種を勝手に国外に持ち出して中国とか韓国で作って売られていたという事件があったんです。これは今でも違法なんですよね。これを何とかしなきゃいけないということで、農家さんの種取りを全部禁止して許可制にしてしまえば徹底的に管理できるだろうということで、改正しますと農水省は言っています。でも登録されている種を勝手に海外に持ち出して作って売るって、今でも違法なんですよ。じゃあこれをどうやって阻止したらいいのかというと、海外で品種登録をするしかないんですね。品種登録というのは国ごとになっているので、例えば日本でこれは早水さんが作った種ですよといくら言っても、中国でも品種登録をしていなければ中国で勝手に作られても何も言えないんです。農水省のホームページにも「これを阻止するには海外で品種登録をしっかりするしかありません」と書いてあります。実際に予算も付いています

速水:となると国内の種を守るための法律というのはちょっと認識が違うということになりますか。

堤:そうですね。これだけでは難しいですね。むしろこれをやったとしても、海外できちっと品種登録をしない限り、対策にはならないんですよ。海外で品種登録をするのはお金がすごくかかりますから、その辺はちゃんと国が育種家さんのことをバックアップしてやっていくほうがむしろ対策になるので、農家さんの自家増殖というのはその補助的な対策なのかなとなってしまいますね。


種の開発者と農家とのバランスを

速水:種苗法が改正されるとどんな問題が起こるのでしょうか。

堤:問題は大きく分けて三つあります。一つは農家さんの負担が大きくなること。今登録品種を育てている農家さんというのは、これから先許可を取る事務手続きと許諾料の支払いでダブルに経済的負担がかかります。そうなると続けられませんという声も出てきます。公的機関が開発した種だったら許諾料は安いと思うんですけれども、民間企業が開発した種の場合にはいつ値上がりするかわからないから農家さんは不安ですよね。

速水:堤さんおすすめのドキュメンタリー映画「タネは誰のもの?」について教えてください

堤:原村政樹が監督なんですけれども、私達が普段あまりピンとこない農家さんの生の声が取材されているドキュメンタリーです。実際の農家さんの声ってなかなか私たち聞くチャンスがないじゃないですか。それがよくわかるドキュメンタリーですね。まだ出たばっかりでこれから手に入るようになるとは思うんですけれども、ぜひ見ていただけきたいですね。

速水:メッセージを読みたいと思います。「種苗法改正、良いと思います。開発者の特許権みたいなものは守られるべきだと思います。個人の開発者にだけ当てはまるのかな?会社内で種の品種改良品種開発をした場合ってやっぱり会社のもの?」という質問を頂いています。個々の農家にとってコストアップになってしまって負担が大きいというお話を先ほど伺いましたが、もうひとつ特許権みたいなものは守るべきだという、その二つの論理があるのかなという気がしたんですが。

堤:全くその通りで、開発した人の権利というのも当然守られなきゃいけない。どんどんコピーされてしまったらインセンティブが上がりません。個人の育種家さんだとか、小さな種の企業などはやっぱり大変だと思うんですね。
ただ誰がそれを負担するのかというのがとても大事なところで、例えば本だったら図書館に行けば公共のものとして私たちは無料で借りれますよね。種も同様に商品だけど公共性があるんですね。例えば私たち“食”としての公共だったり、種は生物多様性のために非常に大事な国の資産であると考えることもできるし、地域の農業を支えていく地域農業、それから文化、伝統など、種にはいろんな公共の要素というのがあるんですね。ですので、権利は大切にしなきゃいけないという部分と、もう一方で公共の資産としての種も守る必要がある。ですから、ジーンバンクという種の銀行がありますが、それは国がやっていますし、以前はお米とか大豆とか麦とか、国民の主食になるものの種に関しては公共予算を付けるという法律があったんですね。そうすると農家さんはその種については安く手に入れることができたんです。ただその法律は2年前に廃止されてしまいました。そうなると私たちの種の公共はどこが守るのか。著作権という言葉で考えると、使う人が負担するのは当たり前なんだから、音楽を買う人が払うのは当然でしょうとなりますが、農家さんだけに負担がいってしまうと、農家さんが潰れてしまう。せっかく開発しても、買う人がいなくなっちゃったら開発した人も困ってしまいますので、ある程度公共政策で予算をつけてバックアップしなきゃいけないものなんですね。


種の多様性を守ることは重要

速水:種子にも多様性が必要で、地域ごとにそれぞれ育ちやすい種はちがうでしょうし、同じ品種を育てていると、気候変動なので突然その土地から生えなくなることがあるんですよね。そのためシードバンクで多様な種子を保存しておき、他の種を試してみることができる。多様性って非常に重要な部分で、ビジネスとして育てることとと、多様性を維持することの両方必要だということですよね。

堤:そういうことなんですね。特に日本の場合は台風があったり、地震があったり、自然災害大国ですから、種に多様性がないといざという時に困ってしまう。コロナウイルスだったり、異常気象だったり、世界的に食料危機に向かっているので、どの国も昔からある自分の国の種を公共のものとして守る法律がどんどんできているんですね。ですので、公共である程度カバーしておいて、国民の資産として食料安全保障だったり、環境だったり、生物多様性だったり、いざというときになってもちゃんと食が手に入るようにする。日本の場合は小規模農家さんばっかりですから、あまり負担を大きくしちゃうとみんなやっていけなくなっちゃういますから、農家さんと種を開発する人を対立させるのではなくて、ある程度のところは国が予算をつけて公共のものとして負担するというところがいちばんバランスが取れるのかなと思うんです。確かに今は登録品種は全体の10%しかないので、種苗法を改正してもそんなに影響はないということになっているんですけれども、それ以外の種を公共で守る法律がないんですよ。日本の47都道府県にいっぱいいろんな種があるのに、統一したデータベースというのもないんです。だから種を守っていくという法律とセットにせずに、権利保護の方だけ強くすると、気づいてみたら種類が減ってしまっていて、公共の種を守れなくなって、農家さんが減ってしまう。そういうことになってしまうので、全部の種を公共資産として国が守ること。それから種を開発する企業も、育てる農家さんも両方をある程度国が守っていく。権利だけ先に強くしちゃうと問題がたくさん出てくるのかなと思います。

速水:個人経営の小規模農家なんかは後から増やそうと思っても難しいですから、法改正の前にもうちょっと議論が必要というお話ですね。種苗法に関してまだ議論する余地ってあるんでしょうか。

堤:今のところは農水委員会で最初に審議されるんですけれども、ちょっと延びているんですね。農水委員会の中でもいろんな温度差があって、拙速にやるべきじゃないという、野党はそういう意見が多いんですけれども、コロナのこともあるし、今審議することじゃないんじゃないかという声がだんだん大きくなってきています。ですので、うまくいけば継続審議になるかもしれないんですね。そうなるともっとたくさん議論ができるので、丁寧に考えていけるのでいいかなと思います。

速水:僕らメディアとしても議論をして提起するようなきっかけがまだまだ必要で、しかもそれは実を結ぶ可能性がまだあるタイミングですっていうことですよね。

堤:そうですね。公共のものとしての種というところが議論から抜け落ちているの、でここもしっかり入れて、種を開発する企業も支える、種を育てる農家さんを支える、それから生物多様性も種の多様性も食料安全保障のためにしっかり国と一緒に支えていく。そういう多角的な議論になっていくときっといい法律になると思います。


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