みんな知らないルワンダの今

2020年5月11日Slow News Report



ルワンダはジェンダーギャップ指数6位

速水:Slow News Report今日はライターのニシブマリエさんです。今日は「みんな知らないルワンダの今」ということなんですが、ルワンダという国についてはあまり日本では知られていません。僕も「ホテルルワンダ」というドキュメンタリー映画で、内戦があって、虐殺が起こったという話ぐらいは知っているんですが、今のルワンダについては全く知りません。そもそもニシブさんがルワンダに興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?

ニシブ:Netflixのドキュメンタリーで「世界の"今"をダイジェスト」という番組があるんですが、それでジェンダーギャップのことをやっていたときに、ルワンダがジェンダーギャップがほとんどない国として紹介されていたんですね 。政治家の女性比率も6割以上で世界一なんです。私も「ホテルルワンダ」くらいの印象しかなかったのですごくびっくりしたんですよ。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は121位 だったんですが、ルワンダは6位なんですよね。でもルワンダのジェンダーに関する日本語の記事がほとんどなくて、ならば私が行って記事を書こうと思いまして、実際に行くことにしたんです。

速水:ルワンダは取材が非常に難しい国だと思うんですが、どういう取材の仕方をされたのでしょうか。

ニシブ:実は日本人の友人がルワンダにいたんです。彼女が青年海外協力隊でルワンダに赴任をしていて、水道事業を手伝っていたんですね。なので地方の人とも、首都の人とも繋がれるということで、彼女に協力をしてもらって取材のセッティングをしてもらいました。全部で20人くらい取材したんですけれども男性は3人くらいです。あとは女性でした。


ジェノサイドで男女比が女性多数に

速水:その中でレジナさんという女性の取材をされたということなんですが。

ニシブ:レジナさんは首都から1時間くらいの場所に住んでいる54歳の女性です。ずっとシングルマザーで、二人の子供を一人で育てていらっしゃった方なんですね。彼女は両親の勧めで中学校からとなりのウガンダに留学をしていました。ウガンダは英語が公用語だったので、英語も学んだとおっしゃっていたんですね。ジェノサイドというと94年のものが一番大きくて有名なんですけれども、その前からずっと紛争は絶えなくて、 どんどん隣国に避難するような動きがあったんですね。なのでレジナさんはウガンダに留学をしたままずっとそこで過ごしていて、三十歳の頃にジェノサイドが起きてウガンダで両親や親族が亡くなったということを聞かされました。そしてジェノサイドが終わった後にルワンダに帰国をして働き始めたという女性です。

速水:ルワンダに帰って仕事をする時に、女性が働くことでの障壁というのはなかったんでしょうか?

ニシブ:いいえ、むしろ求められていたとおっしゃっていました。ジェノサイドの前は女性に権利は全然なくて、例えば銀行口座を開設するにも夫や父親の承認が必要だったりとか、女性は遺産相続が出来なかったりとか、すごく女性軽視がひどかったんですけれども、ジェノサイドで国民の10人に1人が亡くなっているので、そうすると人口の男女比率が崩れるんですよね。人口の6~7割が女性になったんですよ。なので女性が社会に進出をしないと社会が回らない。そこで、政府も後押しをして、女性の社会進出が進んだということですね。


地域格差が大きい

速水:なるほど。では、ルワンダの女性達非常に恵まれた環境にいるというふうに考えていいのでしょうか

ニシブ:うーん。何とも言えないところですね。というのも、やっぱり地域格差がすごくあるんですよ。例えば首都に生活している方々というのは、日本ほどではないにしろ、家があって、家族があって、給料があって、という生活なんですけれども、地方に行くと電気もままならない、水道もない、清潔なトイレもないというような感じなので、ジェンダーといっても地方ではそこまで意識が及んでいないような感ですね。

速水:なるほど。ちなみにルワンダの都市部ってどういう状況なのでしょうか?

ニシブ:これがめちゃくちゃ綺麗なんですよ。アフリカのシンガポールと呼ばれていて、ゴミひとつ落ちていないし、道路もきちんと整備されています。皆さんもスマホを持っていて、道にはプリペイドのギガを売り歩く人がいてみたいな感じですね。タクシーに乗るとスマホの番号を求められて、距離とか料金はスマホに届くみたいな、すごく進んでいるなと感じました。

速水:レジナさんが住んでいる場所は地方なのでしょうか。

ニシブ:そうですねルワンダ自体が四国を一回り大きくしたくらいの大きさなので、すごく小さい国なんですけれども、レジナさんが住んでいる場所は首都から1時間程度なので、地方という言い方は出来ると思います。


女性の社会進出が進んだが問題も

速水:非常に女性が活躍できるような社会であるという話なんですけれども、レジナさんみたいなシングルマザーは社会からどういう目線で見られていうのでしょうか。

ニシブ:シングルマザーはすごく多いですね。結婚のハードルがとても高く、例えば家が賃貸の人は結婚してはいけないというような価値観があったりするんですよ。そうすると地方の人たちはお金の蓄えがないので結婚ができない。すると一緒に生活をしていたとしても籍は入っていないので、戸籍上はシングルマザーということになりますよね。シングルマザーに対する偏見のようなものはないんですけれども、やっぱり籍を入れていないぶん、責任感がちょっと低くなるような部分もあって、最初は一緒に住んでいても、そのうち旦那さんがいなくなって、結局女性の方が働き方を制限して、子育てに従事しなければならなくなったりとか、そういう家庭をいくつか見ました。
ジェンダー先進国というと、やっぱり北欧だったりとか、そっちのイメージがすごく強いですが、それと比較をすると、私がルワンダで見た男女平等というのはすごく独特でした。アフリカは家父長制度が色濃く残っているというのがあるんですけれども、ルワンダも元々はそうだったということもあって、25歳以下の若年層とミドル層以上の意識の差がすごく激しいなと思いました。例えば職業的には政治家も経営者も女性が多いけれども、実際の生活では女性らしさというものをすごく求められています。例えば公共の場でお酒を飲んでいる女性のことを非難をしたり、大声を出すことは女性らしくないと言ったり、ルワンダにはバイクタクシーがあるんですけれども、バイクに乗っている女性を私は一度も見なかったんですよね。なのでバイクに乗るとか運転するとかいうのも、おそらく男性の仕事と思われているんだろうなというのがありました。

速水:それは世代意識なんでしょうか。それとも元々ルワンダにある伝統的なものなのでしょうか。

ニシブ:元々あるものだと思います。ですが、虐殺後の25年間で一つずつ積み重ねてきた施策があるので、25歳以下の人達はジェンダーステレオタイプについて刷り込みがないんですよね。例えば首都で出会った若い女の子たちの話を聞いていると、当たり前に自分が将来何らかのリーダーになるという風に思っているんですよね。私も含め、日本の女性というのはやっぱりケアする存在としての刷り込みというのがどうしてもあるので、前に立つ立場としても副リーダーとかそこに止まりがちなんですけれども、自分が先頭で引っ張っていくというのが自然に身に付いているので、エンジニアになることも、社長になることにも、工事現場にいることにも偏見がない。それが面白いなと思いましたね。

速水:なるほどそこら辺はやっぱり世代によるギャップ非常に大きいということなんですが、パソコンであるとかスマートフォンを使えるかということも年代によって格差はあるんでしょうか?

ニシブ:パソコンを使えるかどうか、スマホを使えるかどうかというのは、おそらく年代というよりも地域なんじゃないかなって思います。
都会でも、会社に勤めている層の方々はスマホもパソコンも普通に使います。ただ、首都の中にもやっぱり貧困層というのはいるので、例えば家と家の間にとたんのようなものを屋根代わりにして住んでいる方がいたりしますので、一概に都会の皆さんが裕福とは言えないんですけれども、年代性別というよりも地域格差の方が大きいんじゃないかなと思いました。

速水:先ほどシングルマザーが非常に多いというお話も伺いましたが、日本では、子供を産んだらキャリアが途絶えてしまったりというような部分があるんですが、ルワンダでは結婚、出産を含めてキャリアを積んでいくということはできるのでしょうか。

ニシブ:法律で中絶が禁止されているので、子供ができたら産む以外の選択肢はないんですね。なのでサポートが得られない人の場合は、そこから何年かの間はキャリアを築くのは非常に難しいと思います。ただある程度お金を持っている人に関しては 地域や家政婦を含めて、みんなで子育てをするというのがルワンダの文化なので、私が会った35歳くらいの会社員の女性は、2児の母なんですけれども、子供が15歳くらいになったら自分はアメリカに留学をするんだなんて語ってくれました。ですので、そういうサポートを得られている人はすごく進んだ考え方をしているんだと思いました。

速水:なるほど。地域と世代のギャップ、そしてコミュニティに恵まれているかどうかみたいなことでも大きく変わってくるということですね。ちなみにいまは部族間の対立はなくなっているのでしょうか?

ニシブ:今の大統領のカガメ大統領という人が 長きに渡って宥和政策を進めてきたんですよ。例えば ID のフツ族ツチ族という表記はもちろんなくなって、ルワンダ人としてのアイデンティティを掲げて宥和政策を進めてきたんですね。ですのでもちろん差別もいけないことという風になっているし、対立は表向きにはないんですね。ただ陰であそこの家は○○族だからとか、そういう地域に根ざしたものは正直まだあるんじゃないかなと思います。

速水:なるほど。ニシブさん、どうもありがとうございました。


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