I Got Rhythm~音楽が生まれる時

I Got Rhythm~音楽が生まれる時

その音楽が誕生し、愛されてきた理由を、残された証言者や音源から紐解いていく音楽ドキュメンタリー番組。
毎回、旬なアーティストやジャンルの話題+切り口でその源流を辿り、掘り下げていきます。

過去の放送(radikoタイムフリー)

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#56『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

2020/5/5 (火)23:55
今月のテーマ:「初めてのボブ・ディラン」(第3回:ノーベル文学賞を獲った歌手)
パーソナリティ:佐藤良明(アメリカ文学/ポピュラー音楽研究者)



<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>

― 今月は、「初めてのボブ・ディラン」と題して、ノーベル文学賞詩人でもあるボブ・ディランを知るための特集をお送りします。今回は「ノーベル文学賞を獲った歌手」と銘打って、ディランの詞のどこがノーベル文学賞にふさわしいのかという疑問に、お答えしていくことを試みます。

スエーデン・アカデミーがディランにノーベル文学賞を与えると発表したのが3年半前。2016年の10月のことでした。12月の授賞式に結局ディランは現れず、スピーチの原稿を送って別の人が代読するという形になりました。そしてディランに変わって、パティ・スミスがセレモニーの席で、ディランの歌『A HARD RAIN’S GONNA FALL.(はげしい雨が降る)』を歌いました。

M1「A Hard Rain's a-Gonna Fall(はげしい雨が降る)」 / Bob Dylan
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

1963年の2作目のアルバム『フリーホイーリン』に入っている長い歌で、核戦争の恐怖が身近だった時代、伝統的なバラッドの形式を借りて、近未来のアポカリプスを鮮烈に表現した歌です。そのシュールで心に刺さるようなイメージの世界を、最初に少しだけ、翻訳をご覧ください。第二連の日本語訳です。

ああ何を見てきた、青い瞳よ
ああ何を見てきた、我が最愛の子
見てきたよ、生まれたての赤ん坊が狼たちに囲まれていた
ダイヤモンドのハイウェイに人っ子ひとりいなかった
黒くなった枝の先から血がしたたり落ちていた
部屋に溢れる男達の握るハンマーが血だらけだった
白い梯子がすっかり水に浸かってた
言葉をしゃべる一万の舌がみなぼろぼろになっていた
銃やするどい刀剣を小さい子らが握ってた
そろそろくるぞ、はげしい、はげしい、はげしい、はげしい、
はげしい雨が降ってくる。

第三連の日本語訳も、ご紹介します。

で、なにが聞こえた、青い瞳よ?
で、なにが聞こえた、わが最愛の子?
破滅を告げる雷鳴が
世界を飲み込む波のうねりが
百人の燃える手が叩く太鼓が聞こえた
一万人のささやき声はだれも聞いていなかった
飢えたひとりが苦しむ声と、まわりの無数の笑い声
溝で死んでたひとりの詩人のうたが聞こえた
路地でわめくひとりの道化のこえが聞こえた
そろそろくるぞ、むごい、むごい、むごい、むごい、
むごい雨が降ってくる

― 今日の2曲目、これはディランのロックに飛びこんでいった記念碑的なアルバム、1965年の『Bringing It All Back Home』からの選曲です。

M2「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding) (血が流れてるだけ)」 / Bob Dylan
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 題名は「イッツ・オーライ、マ(僕は血を流してるだけだ)」。先ほどの『はげしい雨が降る』と同じく、これもアコギ1本で熱演する、イメージの炸裂するナンバーです。冒頭の歌詞をご覧ください。

真昼が割れて差し込む闇が
銀のスプーンを黒く覆う
手作りの剣、子供のバルーン
日蝕月食同時におこる
君の察知は早すぎて、理解にならない
解ろうとしても意味はない

― この詩にはシュールな行だけでなくアメリカ社会に捕らわれて生きる人たちへの風刺も込められているようです。
もう少し、歌詞を見てみましょう。

ぎらつく広告に目が眩み、自分はできると思い込む
できないこともできるだろうと、得られぬものも得られるだろうと
そうしてる間にも人生は、きみのまわりを巡り続ける。

―政治や社会への違和感に満ちた歌、一方では、若者達の共感を呼ぶこんなフレーズもあります。

権力者たちが作るルールは、賢い奴か愚か者のため
僕には、ママ、信じて生きる指針がない。

―この「ママ」は、英語では ma と略されるわけですが、ブルースの伝統では、女のおとなの人をだれでもMAMA と呼びます。

『イッツ・オーライ・マ』が入っている『Bringing It All Back Home』、そして同じ年の夏の終わりに出た『追憶のハイウェイ61』、さらには翌年の『Blonde on Blonde』には、言葉のアーティストとしてのディランの才能がぎらつく歌がまさに目白押しで、それらの歌は過去半世紀、書物や論文や大学の授業や個人のブログで、さんざ論じられてきました。

― 今日の締めくくりにお送りするのは、1975年のアルバム『血の轍』から、『Tangled Up In Blue』(意:憂鬱に絡まって)、「ブルーにこんがらがって」という邦題で知られている曲です。
 2018年に、『Blood on the Tracks(血の轍)』の別テイクを集めた、『More Blood, More Tracks』というCDが出ています。ディランのブートレグ・シリーズの14枚目に当たるものです。今回はそちらのバージョンをお届けします。

M3「Tangled Up In Blue(ブルーにこんがらがって)」 / Bob Dylan
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

これは半ば自伝的と思しき人生の物語、ディランが試行錯誤を重ねて練り上げた作品に思われます。芸術作品の中には、絵画であれ、映画であれ、小説であれ、見れば見るほど、読めば読むほど複雑になるという作品がありますが、ディランのこの歌も、聞けば聞くほど複雑になります。いつの話なのか、どんな出来事なのか、それは誰なのか、いろんなことが巧妙に絡まり合って、ディラン的という他はない一つの世界をかもしだしてきます。リスナーは一篇の不思議な小説を読むような感じで聞くことになります。

~佐藤良明さんが対訳を手掛けた、ボブ・ディランの新訳詩集(全2冊)~
『The Lyrics 1961-1973』『The Lyrics 1974-2012』(佐藤 良明 訳・岩波書店)

390曲に及ぶボブ・ディランの全自作詞を網羅した訳詩集。
佐藤良明さんの考察が加わった新訳で、英語の詩と対訳になっています。
ディランの歌詞の世界にどっぷりハマりたい方は是非、書店等でお手にとってご覧下さい。
書籍の詳細はこちら⇒(岩波書店HPへ)
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