日本の林業の今

2020年4月14日Slow News Report


林業に若い人が増えている?

速水:今日も引き続き、調査報道グループフロントラインプレスのメンバーで週刊朝日編集部の記者西岡千史さんです。西岡さんはチェーンソーで木を切り倒すような現場には何度も立ち会われてるそうですね。

西岡:現場の取材をする時はできるだけあの立ち会ったり、その中で現場の人に話を聞いたりということはよくしてます。

速水:チェーンソーで木を倒すのは、実際そばで見てみるとどういうものなんでしょうか?

西岡:基本的には木を切る方向を決めて、その方向を狙って、チェーンソーを使って木を倒していくということになります。いちばん気をつけなければいけないのは、他の木にぶつけてしまって木を傷つけてしまうことですよね。傷がついてしまうと値段が下がってしまいますので、そこを気をつけなければならないということと、もう一つは安全性に気をつけないといけないっていうところになります。

速水:倒れてくるのが人に当たるというのがいちばん恐ろしいわけですよね。

西岡:変なところに倒してしまうと跳ね返ってくることもあるそうです。

速水:今、林業の現場に従事している方々は高齢化が進んでいたりするという状況はあるんでしょうか?

西岡:日本の林業就業者数のピークが昭和30年で約52万人だったのが、今5万人を切ってますね。平成27年で45000人で、高齢化率もずっと上がってきてたんですが、最近は若い就業者が増えてきて、現場にも若い林業者が増えているような印象ありますね。統計でも増えているようです。

速水:なぜ若い人たちが今増えているんでしょうか?

西岡:林業だけではないんですが、農業も含めて、自然と環境にマッチしたライフスタイルを送りたいという方ですとか、昨日もちょっとお話ししましたが、戦後の拡大再造林で植林した木が伐採の時期を迎えていまして、その伐採業に従事する林業者が増えてきているというところですね。特に伐採業は体力仕事なところも多いので、若い人たちが増えているというところもあるかなと思います。

速水:なるほど。自然が好きな人達が働くといことにもちょっと驚いているんですが、収入はどうなんでしょうか?

西岡:平均が340万円です。日本全国の全就業者の平均が430万円ぐらいだったと思うので、そこよりも100万円程度低いという形になります。

速水:西岡さんが取材されている先には、農業全般も取材されていると思うんですが、農業と林業を比べるとどちらが割がいいんでしょう?

西岡:そこは難しいところですね。やっぱり人によって全く違います。林業従事者といっても幅広いので、例えば伐採業者というのは、ある意味では山があれば仕事がいっぱいあります。木を切って木材を搬出すればお金がもらえるということになるのですが、昨日もお話ししたように、今は木材がものすごく安いので、木を切っても山主に入ってくるお金が少なくて、山主の方達は今本当に辛い状況になっていると思います。

速水:なるほど。山主というのは、農業でいえば土地を持ってる人みたいな感じですよね?実際に木を切る人は違う人達だったりするんですか?

西岡:いろいろ林業の形はあるのですが、最近一般的なのは、山を所有している方は高齢の方も多く、自分で木を切ることができないので、伐採業者に任せていることが多いです。

速水:具体的な事例があったら教えてもらっていいですか?

西岡:私がよく取材しているのは、そういった請負型の伐採業者ではなくて、自伐林家という方たちをよく取材していまして、山主の方が自分自身で山を切って木材を搬出するという人と、もうひとつは山主に委託されているんですが、山主と、今後この森をどうやって持続可能な森にしていくかということを相談しながら、その人達と、一回来て山を切ってそれで終わりという契約ではなくて、5~10年という長いスパンで一緒に仕事をしながら林業をするという方をよく取材しています。

速水:新規参入で若い人たちが入っている中で、すぐに上手くいくもんなんでしょうか?
西岡:いちばん身に付けなければいけないのは安全性の技術ですよね。チェーンソーで木を切る方向ですとか、チェーンソーもが体に当たってしまったら大怪我になってしまいますので、そういった安全性をまず第一に身につけるということですね。ちなみに林業従事者は全産業の平均と比べて労災の確率割合が10倍高いという、すごく危険な仕事なんですね。ですので、まず安全性を大事にすることが大切かなと思います。


林業者も花粉症に?

速水:昨日の話の続きになるんですが、林業の方は花粉症対策はどうされてるのか、やっぱり花粉症発症率高いんでしょうか?

西岡:昨日言われて、色々知り合いの人にも聞いてみたんですが、いることはいるみたいですね。といっても、対策は基本的には都市部の人と同じですので、マスクをして作業するというぐらいしかないそうです。ただ、花粉症はスギの花粉だけが原因じゃなくて、大気汚染ですとか、そういうのが影響していることも多いようです。いろんな論文なんかでも、ただスギ花粉があるだけのところよりも、交通量の多いところの人のほうがスギ花粉症の人が多いというデータもあります。


今の時代の林業

速水:林業を兼業でやってる方も結構いるんでしょうか?

西岡:最近は兼業型の林業というのも注目されていて、特に若い方ではそういった林業を目指す方が多いです。例えば観光業をやっていて、田舎でガイドなどの仕事をしながら、冬場で仕事がないという時に、冬場に林業の仕事をするという方もいます。そういった方たちがよくやってるのが薪ストーブですよね。安いもので数万円で設置できるものもありますので、山で木を切ってきて、薪にしてストーブにする。あるいは周辺で使いたいという人が薪を販売する。もうちょっと発展してるところだと、温泉がだいたいどの市町村でもあると思うんですけど、そこに薪ボイラーを導入して、薪をそこに搬出するという林業家の方も結構いらっしゃいます。

速水:昔ながらの薪というスタイルで実はまだ動いている部分もあるんですね。

西岡:薪は熱利用としては最近はかなり注目されていて、ストーブも性能が良いものが出てきてますので、注目されてますね。

速水:海外の林業の話もお伺いしたいんですが、海外でも新しい持続可能なものとしての林業が復活してる所があると伺ったのですが。


世界のの林業事情

西岡:ドイツですとか、オーストリア、スイスといったところが林業が盛んで、特にドイツでは林業関連の産業でだいたい100万人の雇用があると言われていて、このドイツの百万人というのは林業者だけではなくて、家具職人さんですとか、伐採する人、製材する人、いろんなことを含めて百万人なんですが、自動車産業より雇用量としては自動車産業より多い産業として、すごく栄えていますね。

速水:ドイツの自動車産業なんていちばん大きいと思いきや、林業は負けてないんですね。一方でアメリカなんかでは、巨大ファンドが山林に投資したりするようなケースもあると伺ったんですが。

西岡:2008年に食料危機があった時に、農地の買収というのが始まりまして、先進国による発展途上国のランドラッシュっと言われてるものなんですが、それと同じように、バイオマスエネルギーですとか、そういったものに投資するファンドが増えています。もちろんアメリカだけではなくて、日本も東南アジアの国の土地を買収して、そういった形でファンドにしてるところはあります。

速水:日本の山林に関してはどうなんでしょうか?そういう可能性っていうのはありますか?

西岡:日本の山林は大量伐採ができないので、そんなに魅力がないというところもあるんですが、それでも最近は中国とかでは日本の木材がすごく人気ですので、買いたいという人が来るという話は聞いたことがあります。

速水:魅力を高めて注目されれば変わっていく可能性があるということですか?

西岡:もちろん海外から注目されることはいいことなんですが、結局は森というものをどうやって持続可能なものにしていくのかということになるかなと思います。ただ買って全部木を切って、植林もしないで自分の国に持っていくということになってしまえば、それは後々日本の環境を破壊することにつながりますので、そういったものは防がないといけないとは思います。

速水:まあ国土を丸裸にされてしまったら困るわけで、投資が入ればいいっていう考えはもちろん違うわけですね。

西岡:外国資本だけじゃなくて、日本の山は木材の蓄積量が増えてますので、木を切って裸のはげ山にして逃げるという業者も増えてることもまた事実です。


森林環境税は森を救う?

速水:一方、日本でまもなく導入される森林環境税。こちらはどういう性質のものなんでしょうか?

西岡:森林環境税は。住民税を払っている方に一人1000円上乗せされるという形で、全自治体に配分されるという税金です。税金を使って森林の保全や、需要の拡大をしましょうということになっています。自治体ごとの配分額は、私有林人工林面積5割、林業就業者数2割、人口3割に案分して決まります。

速水:森林環境税の導入は林業にとっては再生のチャンスという部分があるんですか?

西岡:そこが一番のポイントですね。現在、日本の政府は木材自給率を50%まで高めるという計画を出していまして、ちなみに2018年時点で36.6%なんですが、これを2025年までにあと10%以上上げるということで、今進めてるわけですね。

速水:目標としては高い数字ということですよね?

西岡:高すぎるが故に、木を切りすぎているという批判がかなり出ていまして、実際に大雨災害で土砂崩れが増えているのは、こういった林業による荒い施行が原因になって土砂崩れが起きたり、丸太が山から流れ出してきたりというのがあるのではないかという意見もかなり出てきてます。

速水:最後にお伺いしたいんですが、林業に転職するというのはアリですか?


林業という選択は“アリ”なのか

西岡:難しい質問なんですが、難しい仕事に挑戦するという意味では、ものすごく価値の高い仕事だと思います。目の前の利益を考えると、全部切ってしまってそれを売ってしまえばいいわけなんですが、それでは日本の山は禿山だらけになってしまいますので、やっぱり10年、あるいは50年、100年という未来を考えながら仕事ができるという方であればぜひ参入してほしいなと思います。

速水:わかりました。西岡さん連日ありがとうございました。


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