TOKYO SLOW NEWS

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速水健朗

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香港デモとはなんだったのか

2020/4/6 (月)21:00
2020年4月6日Slow News Report



デモの背景にあるもの

速水:スタジオには調査報道グループフロントラインプレスの岸田浩和さんをお迎えしています。フロントラインプレスとは、スローニュース株式会社のサポートを受けて取材活動を続けているグループです。岸田さんよろしくお願いします。

岸田:よろしくお願いします。

速水:岸田さんの肩書きはドキュメンタリー監督、映像記者でよろしかったでしょうか?
岸田:はい。現在は主にYahooニュースとかバイスメディアとか、いわゆるインターネットメディア向けの短いドキュメンタリー取材を行っています。アフリカのスラムのサッカーチームですとか、閉店を決めた京都の料亭の最期の100日間、ミャンマーの過激派の僧侶とかですね、いろんなテーマを取材してるんですが、一貫して数ヶ月から数年に渡って長期の取材をするのを得意としています。

速水:そんな岸田さん、今回お伝えするのは「香港デモとは何だったのか」なんですが、香港の大規模デモはどのようなきっかけで取材されるようになったんでしょうか?

岸田:いちばん最初は2014年の秋に始まった香港の雨傘革命という大きな民主化運動なんです。これの取材を皮切りに、今回も同じような場所でまた民主化運動が起こったということで、取材をしました。

速水:昨年ですよね。ちょっと今は香港の話を忘れてる部分があるんですけど、雨傘革命は2014年、去年盛り上がった2019年の大規模デモ。ずっと継続的なテーマでデモが行われていると考えていいのですか?

岸田:雨傘革命と今回のデモ、スタートのきっかけの表面的な部分は全然違う事象なんですが、大きくは民主化運動という形でとらえることができると思います。今回のデモの経緯なんですが、最初は2019年の6月頃に逃亡犯条例という、犯罪者の引き渡しを海外の国と条例を決めてムーズにやり取りしましょうと、そういう条例を中国主導で香港が条例改正をするという出来事があったんです。この条例の中で、中国の当局が好ましくないと判断した人を自由に拘束して、中国に連れて行って、そこで中国側の主導のもとで裁くことができるという内容が含まれていて、ここに香港の人々が大きな危機感を抱いたということです。

速水:ただそこだけでは終わらないで続くわけですよね。

岸田:そもそも香港はイギリスの植民地として、150年ぐらいは自由経済と民主主義の下でずっと発展してきました。中国とは全然違う政治のシステムを取ってきたわけですが、1997年に香港が中国に返還されました。ただ香港に関しては。一国二制度という考え方で、50年間はこれまで通りの自治を認めましょうという取り決めがあったんですね。

速水:それがちょっとずつ変化してきているわけですよね。そこを敏感に察知した若者たちは、自分たちの民主主義を主張していると。

岸田:例えば、民主派寄りの、中国に批判的な発言をしていた書店の店主が行方不明になったり、民主化よりの発言をしてた香港の富豪が中国で拘束されているのか分かったりとか、一国二制度と言いながら、中国の制度に飲み込まれていくんじゃないかっていう不安が高まっていた中で、この逃亡犯条例の話が出てきたので、これはまずいということで若者が動き出したわけです。

速水:逃亡犯条例の問題に関しては、本土側が一歩引いた形でいいんですか?

岸田:どんどんデモが過激化していきまして、香港の政府も、デモ隊に対して一切引かずに完全に突っぱねて、要求を飲まないという状況が続きました。あまりにもデモが過激化したので、逃亡犯条例は一回引っ込めたんですが、

速水:そこでは収まらずに、デモはどんどん過激化しても大きくなるわけですよね。その頃に取材をされて、どういう状況だったんでしょうか?


若い人だけではなく、色んな世代が参加している

岸田:8月に200万人が集まったデモがあって、その現場に行ったんですけども、この時は逃亡犯条例のことだけではなく、普通選挙を実施してくださいとか、警察がかなり暴力を振るってるので第三者委員会を立ててちゃんと検証してくださいとか、5つの要求を立てて、これが受け入れられないとデモ活動はやめませんというような形になってたんですね。

速水:参加している人たちを見てみると、若い人が多いようですね。

岸田:そうですね。香港の人口700万人位の中で、そこに100万人とか200万人のデモ参加者が集まるということで、大規模のデモに関してはあらゆる年代の人が参加しています。特に若い人が目立つのは過激なデモですね。火炎瓶を投げたりとか、そういう現場では10代後半から20代前半の若者たちやっているイメージでしたね。

速水:報道で見ていると、空港も閉鎖寸前なんじゃないかとか、観光客も入れないんじゃないのかと思ってしまうんですが、実際取材もできる訳ですし、観光客も来ている。そのへんが伝わってない部分があるのかなって気はしたんですが、いかがですか?

岸田:香港全域で同時にデモが起きているというわけではなくて、ある通りのある部分で衝突が起きて、30分ほどするとそこは収まって、また別の場所で起きてというような形です。そのデモに関しては長期的に起こっているんですけど、かなり局地的です。

速水:たとえばそれは雨傘運動の時とは違う動きがあると言われていると思うんですが、、統制された運動なのか、もしくは SNS なんかで情報が随時出てくるような分散的なデモなのか、その辺も違いってあるんですよね?


雨傘運動と2019年のデモの違い

岸田:そうですね。2014年の雨傘革命の時は、象徴的なリーダーが何人かいて、彼らが前線に出てみんなを引っ張っていくというイメージだったんですが、リーダーが倒れたり、リーダー同士の意見の衝突でどんどんデモが中でうまくいかなくなった。今回は象徴的な一人のリーダーとっていうのはいなくて、それぞれの呼びかけに発起人がいるんですが、毎回それが変わっていくんですね。参加者もです。テレグラムというSNS、チャットツールを使って、何月何日にこんなデモやりたいんだけど、みんどう?ってグループを作って、「じゃあ俺も参加するよ」みたいな形でどんどんそこに乗っかっていくんです。

速水:これ取材する側も情報を得るのって難しいんじゃないですか?

岸田:そうですね。ただSNSに何月何日にどういうデモがあるというのが随時アップデートされていくので、それを追いかけていくというのと、デジタルネイティブの世代が、自分たちのデモ活動に必要なツールをどんどん作っていくんですね。たとえば警察の動きと衝突現場をリアルタイムで表示する地図アプリというのがあって、我々もそれを見ながら、「今この通りのここで衝突すがあるんだな。じゃあそこに行ってみよう」と、取材の方もそういうような形で行いました。


デモをする若者たちが求めているもの

速水:一通メッセージを読みたいと思います。「私はずっと気になってました、香港のこと。コロナウイルスの影に完全に隠れてしまいましたが、今どうなっているのか、どこのメディアも伝えていません。今夜 スロニューが伝えてくれる」というメッセージ頂いてます。今、香港の街ってどうなってるんでしょうか?
岸田:現在はさすがに大規模なデモは行われてないんですが、例えば1月1日にはデモがあって、衝突があり、逮捕者が出たりしました。つい先月の3月8日ですかね、デモで関連しなくなったのデモ隊の納追悼集会が行われたんですけど、そこに警察が踏み込んで、参加者の63人を逮捕しました。

速水:63人というのは結構な数字ですね。これ日本では報道されたニュースだったんですか?

岸田:新聞の中には少し見出しは見つけることができたんですが、ほとんど他のニュースの陰に埋もれてて追えないというような状況ですね。

速水:ちなみに岸田さんご自身は、今年になってからの香港に行ったりしているんでしょうか?

岸田:現地のカメラマンとやり取りをしてるのですが、まだ足は運んでいません。今後の予定としては、6月にちょうど香港デモ2019年から一年経ったっていうことで、大きなデモ活動があるんじゃないかということで、そのあたりに行けるようであれば、もう一度取材をしたいなと思っています。

速水:デモは今後も続いていくという見立てですが、ということは問題は引き続き続いていくっていうことですか?

岸田:いちばん大きなところは、普通選挙を実施してくださいということなんです。行政長官っていう、日本だと首相のポストですよね。香港の中のトップを普通選挙で決めたいということなんです。当初は普通選挙を実施しますよっていう約束になっていたんですが、なかなかそれが実施されずに、結局中国側が選んだ大陸よりの候補者を登用した。国会議員の選挙も、いわゆる一般の香港人というのはなかなか投票できない。これを何とか勝ちとろうっていうことで、続いていくんじゃないかと思います。
2014年の雨傘革命の最後の日というのを取材して、この時に聞いた言葉が非常に印象的だったんですが、雨傘革命の最後の日、運動が終わってしまうというのは非常にあっけない幕切れでですね、取材している私自身がちょっと悲しい気持ちになって、こんなのでいいのかっていう気持ちを現地の若者とかカメラマンにぶつけたんですね。そうしたら、彼らが言ったのは「雨傘革命運動は終わってしまうけど、俺たち香港人は仲間とともに連帯して、大きな敵に立ち向かうっていう新しい OS がインストールされたんだ。その役目は終わったので、また大きな問題が起こった時に、このアプリが起動するんだ」みたいなことを言っていました。今、コロナでかなりデモの動きは制限されて、民主派の人達はかなり締め付けが強くなってると思うんですけど、それでこの運動が終わってしまうとは考えにくいと思ってます。

速水:岸田さんは、去年の香港のデモの取材の中でも、ある若者の言葉が非常に記憶に残っているそうですね。

岸田:かなり厳しい戦闘で、いわゆる市街戦のような状況の香港理工大学の衝突の現場にいた学生に、ゴム弾を打ち込まれて、火炎瓶が飛び交う中で、怖くないのかと聞いたんです。なぜあなた達は戦うんだってと質問したんですね。そうしたら彼らが言ったのは、「香港の未来は私たちも分かりません。希望があるからデモが続いてるわけではなくて、希望を見つけるために活動を続けています」と言ったんですね。希望があるから、何かに向かって戦って、一致団結してるんだと思ってそういう質問をしたんですが、彼らは「希望はない」と。じゃあ絶望なのかといったら、「そうではない。希望を見つける、そのひとつ前の段階でいま戦ってるんだ」って話をしてくれて、非常に強い意志を感じました。

速水:香港の若者たちが置かれている状況、中国の締め付けだけではなく、例えば雇用であるとか経済とか、そういう面ではいかがでしょうか?

岸田:今まで経済発展してきて、日本と同じような自由な中で彼らは育ってきたと思うんですが、二十数年後には完全に中国に返還されて、中国のシステムの中に戻ってしまうという危機感はあります。

速水:ただ今の時点でも、いわゆる大国としての中国の影響力が強くなっている中で、香港はも”カナリアの炭鉱”みたいなところもあす。そういう不安も含めてって言うことですよね。ちなみに、日本の若者なんかに聞いてみると、政治的なことに関する関心度の違いが如実だと言われるんですが、それは取材してみても思うことですか?

岸田:やはり危機感という意味では全く違うものがあります。ただそれは香港の学生が優秀で日本がそうではないっていう意味ではなくて、日本は民主主義の仕組みがちゃんと機能していて、選挙ができるというのがあるわけですね。だから危機感がないというのも当然かなと思ってます。香港の若者達は、もうそれが取り上げられそうになっているんです。自分たちは自由を知っているのに、それがない未来が見えていると。これはなんとかして回避しないといけないというところで、必死に戦っている。危機感というのはそういうところかなと思います。

速水:なるほど。ちなみに香港の大人たちはこのデモに関してどういう風に思ってるんですか?

岸田:前線には若者たちの姿しか見えないんですが、例えばデモの現場で、警察にデモ隊が追いかけ回されて拘束されそうになってる時に、白タクがいっぱい止まっていて、デモ隊を逃がすんですけど、車を持ってる大人がそれをやっていたりとか、デモの現場に食料とかガスマスクのカートリッジとか、いろんな物資が送られてくるんですけど、そういう後ろの兵站って言うんですかね、そいうう部分で大人達がバックアップしてるというのはあります。

速水:表立っては日常の生活の中であるとか、仕事がある中で、前線に出るわけではないけど、支援している人たちもたくさんいるということですね。雨傘革命の時の声であるとか、去年の11月の希望を見つけるための活動であるとか、いろんな声を聞きながら、これをどうやって伝え続けるか、関心を持ってもらうかということ。いま、世界が圧倒的にコロナウイルスで大騒ぎしてる中で、関心を持ち続けることって今すごい重要になっていて、岸田さんのモチベーションもすごく伝わってきました。

岸田:ドキュメンタリーの取材というのは、答えはこうなんですよとお伝えするわけではなくて、今起きてることの状況を伝えて、小さなストーリーであったりとか、この人がこういうことを考えてるというのを伝えて、それを聞いた人、見た人が自分で想像してもらうというところが大切なのかなと思うんです。


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