今月のテーマ：「ブルーノート80周年」（第１回：なぜ今ブルーノートか？）
パーソナリティ：行方 均（レコード・プロデューサー）


＜番組のトーク・パート（概要）と選曲リスト＞

― 今月は、創立80周年を迎えたブルーノート・レーベルに焦点を当ててお届けします。
今回は「なぜ今ブルーノートか？」と題して、創立80年を経て今なお現役最先端を行くジャズ・レーベルの魅力の原点を探ります。

ブルーノートは1939年、ナチス・ドイツを逃れた２人のユダヤ人ジャズ・ファン（アルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフ）がベルリンを逃れ、NYに渡って設立したレーベルです。以来、1970年前後までブルーノートを統括しました。ベルリンは、いち早くジャズをアートと認めた、ヨーロッパ最先端の都です。

1「ウン・ポコ・ロコ」/ バド・パウエル・トリオ
＜Spotifyリンク＞※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

　ロックが流行っていた1970年頃、行方均がジャズに出会った最初の１曲。1951年のブルーノート録音ですが、ある意味（プログレッシヴ・バンドの）ピンク・フロイドより新しい！と感じた曲。

―ジャズは、スタンダード曲にアドリブを入れる、というイメージかもしれませんが、ブルーノートは新曲主義のレーベルで、とにかく新曲を作り上げてきました。今となっては、そのブルーノートが作った数々のヒット曲（新曲）が、ジャズ界のスタンダードになっています。

―ブルーノート盤を追いかけていると、誰でもすぐにレコード番号が気になり始めます。その中でも名高いのは1500番台(1950年代半ば～後半)と4000番台（1950年代後半～70年代始め）です。多くのジャズ・ファンにとって、このレコード番号が年号のような意味合いを持っており、「ブルーノート1500番代は～」という話をすることもあります。それぞれの特徴を一言で表すと、1500番代はモダン・ジャズの完成期、4000番代はモダン・ジャズ発展期/拡大期と言えます。

2「アフロディジア」/ケニー・ドーハム
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　1500番台のレコードから１曲。1955年の録音です。当時結成されたばかりのジャズ・メッセンジャーズに、コンガやホーンが入った、リズミカルでグルーヴの効いた曲です。1500番台には、（マイルス・デイヴィスの演奏で有名な）キャノンボール・アダレイの「枯葉」や、ジョン・コルトレーンの「ブルー・トレイン」といった名作がそろっていますが、この曲は、ある意味当時のブルーノートを象徴している、素晴らしい１曲です。

―この曲は、のちにロンドンのクラブ・シーンに再発見され、アシッド・ジャズ・ムーヴメントに繋がっていきます。

3「処女航海」/ハービー・ハンコック
＜Spotifyリンク＞※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

　4000番台からも１曲。1965年の録音。ピアノはハービー・ハンコック。ベースがロン・カーター、ドラムスがトニー・ウィリアムスと、当時のマイルス・デイヴィス・クインテットのリズム・セクションです。フレディ・ハバード(tp)とジョージ・コールマン(ts)を加えたメンバーで演奏しています。

―4000番台は、モダン・ジャズが色々な形で、新しい旅に出ていった時代。この曲が象徴する「旅」の続きに、現代のジャズ・シーンがあり、1つの原点となった曲とも言えます。

４「ザ・サイドワインダー」/リー・モーガン
＜Spotifyリンク＞※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

　ブルーノートを象徴するジャズ・ロック。1963年の録音です。ビートルズがアメリカに上陸し、世界を席巻した時代に、ジャズから聴こえてきた新鮮なビートです。ビートルズの曲に混じって、当時のヒット・チャートを駆け上った曲でもあります。

―今回はブルーノート創立80周年に寄せて「今なぜブルーノートか」と題し、ブルーノートの特質に迫りました。以上の４曲は、いずれもジャズのベスト盤に入るような人気曲ばかりですが、いわゆるスタンダード・ナンバーではなく、ブルーノートが、自らのスタジオで、自らが選んだミュージシャンたちとともに作り上げた曲です。

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監修：原田和典
執筆陣：原田和典、後藤雅洋、村井康司、行方均、内本順一、原雅明、柳樂光隆

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