今月のテーマ:「The World of Black and Blue」(第3回:ラグタイム)
パーソナリティ:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
「ラグタイムのリズムがみえる
しゃれた山高帽に、エレガントなドレスで
やっと手に入れた自由を祝う
ダンスホールや祭りで
スコット ジョプリンの「メイプル リーフ ラグ」をきいて
差別のない世界を夢見る」
絵本『リズムがみえる I see the rhythm』(サウザンブックス社)より
(文:トヨミ・アイガス、絵:ミシェル・ウッド、翻訳:金原瑞人、監修:ピーター・バラカン)
<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>
― 今日のテーマはラグタイムです。ジャズが誕生する少し前に、ラグタイムという音楽が生まれました。
基本ピアノが中心ですが、リズムは19世紀のマーチング・バンドの影響を受けています。ラグとは“ragged
(ちょっと崩れている)”というニュアンスの言葉で、1、2、3、4、というきっちりとしたリズムではなく、
シンコペーションが入っている音楽です。
まずは、ピアノロール(自動演奏ピアノ)の曲を聴いていただこうかと思います。一番初期のものは19世紀の終盤に、
また88鍵のピアノロールのものは1900年に誕生したと言われています。
ラグタイムと言えばこの曲!スコット・ジョプリンの代表曲を聴いてみましょう。
1「Maple Leaf Rag」Scott Joplin
1899年に発表された曲を、1916年、本人が演奏して、ピアノロールに記憶したものです。
ラグタイムといえば、1970年代の映画『スティング』で使われて、注目されるきっかけとなりました。
2「Steeplechase Rag」 James P. Johnson
ストライド・ピアノの演奏。左手がストライド(闊歩)するような、大きく低音が動く、リズムを勢い良く刻む曲です。
― ピアノがメインのラグタイムですが、ギターのラグタイムもあります。こちらはアメリカの南東部の州で演奏されることが多かったようです。フロリダ、ジョージア、サウス・カロライナ、ノース・カロライナ…など。
3「Diddie Wa Diddie」 Blind Blake
1920年代後半にかなりの数のレコーディングをしている、フロリダ生まれの奏者による演奏。このジャンルでは未だ彼の演奏を超える人はいないと言われるほど素晴らしいギターリスト。70年代にはライ・クーダーもカヴァーした曲。
―前回の“ブルーズの誕生”の回で、ジョンソン・ボイズというグループのヴァイオリン・ブルーズをかけました。
そのヴァイオリンを弾いていたロニ・ジョンソンはギターリストとして専ら有名なんですが、
彼の演奏で、ギターのラグタイム曲を聴いていただきます。
4「Hot Fingers」 Eddie Lang & Lonnie Johnson
(若くして亡くなった)エディ・ラングとの共演。1920年代の彼らの曲がかなり残っているんですが、これは1929年の録音。
― 最後にもう一曲、ピアノのラグタイム曲を。ジャズでは忘れてはならない、ニューオーリンズのミュージシャンに
ジェリー・ロール・モートンという人がいます。
初期のレコードは78回転のSP盤で、その演奏時間の限界はだいたい3分くらいのものなんですが…。
スタジオの中で3分近くなると、赤ランプを灯したり、ミュージシャンの肩をエンジニアが軽く叩いて、
もうそろそろですよ、という合図を出したということです。
5「Shreveport Stomp」Jelly Roll Morton
ピアノ・ロールの場合は、SPレコードではないので、もう少し時間が自由に使えます。ジェリー・ロール・モートンのこの曲は3分よりも少し長めの演奏で記録されました。
― 次回のテーマは「ジャズの誕生」です。お楽しみに!