『ゲームの王国』上・下(早川書房)で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞した注目の若手作家・小川哲さんをお迎えしました。
▼音声はコチラから!
http://park.gsj.mobi/voice/show/10808
【海猫沢めろん】
イミテーション・ゲームについてですが・・・
【小川哲さん】
“機械に心があるか”ということをどうやったら言えるのかについてチューリングは
イミテーション・ゲームという壁の向こうにいる男女を当てるというゲームを使って
「機械が人間と一緒にやって、話している相手が機械か人間か分からなくなれば
心があるといっていい」
と言ったんですね。
ただチューリングテストにも欠陥があって、
人間側が機械だと疑われたりしているんですよ。
【海猫沢めろん】
昔読んだ本で面白かったのが、
海外のチューリングテストの中に“最も人間らしかった機械賞”と
“最も人間らしかった人間賞”というものがあって、
それを目指すという本があるんですね。
【小川哲さん】
チューリングテストが全然ダメという話ではなくて、
それまでは「機械に知性があるとか心がある」という話をする人がいなかったんですよ。
なぜならコンピューター自体がまともになかった時代だったからです。
そんな中でチューリングはコンピューターの未来の在り方を想像して、
そういう問いをしたんですよね。
【海猫沢めろん】
でも『ゲームの世界』ではそういうのを移送した感じではないですよね?
【小川哲さん】
そうですね。
ただ僕が当時考えていたのは、「世界一楽しいゲームってなんだろう」ということです。
そこで、“脳みそが楽しい状態になった人が勝つゲーム”というのが一番楽しいだろうと
思って(笑)。
脳波を測定して、一番楽しいと感じている人にコインをあげるみたいな。
【海猫沢めろん】
少年ジャンプの『HUNTER×HUNTER』の作者は
すごくゲームが好きなんだなって感じはするんですが、
あの漫画は“一番楽しんだ人が一番偉い”という世界観なんですよね。
自由というものは自己選択ができるということだと思いますが、
その観点から見ると、“楽しくなきゃいけない!”っていうルールのもとで
楽しくなろうとするのは、すでに楽しくないじゃんって思うのですが・・・。
【小川哲さん】
実際そういうゲームがあったら、ルール上に表記するのではなく、
制作者サイドだけが把握していて、楽しんでいる人が有利になる設定にするみたいな。
みんなに受けるかどうかは分かりませんが・・・。
【海猫沢めろん】
それ、ソシャゲ(=ソーシャルゲーム)に近い発想な気がします。
人の精神を悟られないようにハックしていくみたいな。
ぼくソシャゲの運営に関わっていた時期があって、そのときは
“いかに気持ちよくガチャを回してもらうか”ということを設計に組み込んでいました(笑)
【小川哲さん】
ソシャゲってだいたい同じ設計になっているんですが、
キャラクターとかで骨組みを隠しながらプレイヤーに楽しんでもらうというやり方が
いまのゲーム作りの中心になっているんだと思います。
▼『ゲームの王国』上・下(早川書房)
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▼連載 『地図と拳』(小説すばる)
http://syousetsu-subaru.shueisha.co.jp/trialread/201810-1/