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【海猫沢めろん】
あるアメリカの街の話なんですよね。これノンフィクションでこのリン・ディンさんって、今から3年前ぐらいにアメリカ旅行をしながら特にアメリカの低所得層とかちょっとあまりいけないタイプの人たちを取材して、話を描いているんです。
ホームレスとかコカイン中毒の人とかも描いていて、その人たちのリアルな声を記している本なんですよね。
こういうのはすごい貴重だと思うんですけど、読んでて日本もアメリカも変わんないなって思ったんですよね。というのは、僕、実は小説の取材のために大阪の西成に1か月ほど暮らしていたんですよ。もともと大阪の出身で、別にお金持ちの家でもなく、学歴もないわけですよ。だから、あんまり違和感がなくてそこで住んでても(笑)。すごいところなんですよ?西成って(笑)。
メディアで見れるかもしれないですけれども、日本で唯一暴動が起こる町ですよね(笑)。住んでる方はすでに高齢化が始まっていて、昔は労働者が多かったんですけど。
東京での出版の仕事ではみんな高所得で高学歴の人なんですよ。で、そのギャップと言うか「絶対に分かり合えない感じ」が凄いしていました。地方と都市の格差みたいなものが如実感じていて、今回の『アメリカ死にかけ物語』も同じだなって思ったんですね。
僕はトランプが大統領になった時に、みんな「おかしい」って話をしたんだけど、僕はそうじゃなくて、「おかしくなくてこれが楽しいんだ」って言ってる人の意見をもっと聴きたいと思ったんですね。
でもそういう人がいるかなと思ったらいなかったんですよ。
ただ僕がすごいなと思ったのは、ここで出てくる“底辺の人”だけど問題がすごく分かっていて『成人が悪い』っていう話をすごいするんですよ。
それに結構驚いて、なかなか西成で住んでいるときにそういう話をするおじさんがいなかったんですよね。日本は文句言えなくさせているってのはあって、リンさんも日本にこの間までいたみたいで西成行ったみたいなんですよ。
聞くところによると日本っていうのは、「これをしなさい。あれをしなさい。」とか「道路のこっちを歩きなさい。駅に行ったらここに並びなさい。」とか、恐ろしい国だと思われたそうです(笑)。
僕らは暮らしているとわかんないけど、ディストピアですよね。
そんなに命令をしてみんながそれを守っている、ってなかなかないですよ。
この本は、本当にいろんなことを考えさせられるし、今読まれるべきものだと思います。
▼リン・ディン『アメリカ死にかけ物語』 (河出書房新社)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309227511/