▼音声はコチラから!
http://park.gsj.mobi/voice/show/9466
今日のテーマは「太宰治」ということで、最近、漫画界でも増えている
文豪を扱った漫画の中からおすすめを紹介してもらいました。
―――最近、文学を扱った漫画をよく見る気がします。
「文学関係と接点のある漫画は非常にあります。今回のテーマである『人間失格』を原作とする作品でおすすめが2つあります。古屋兎丸さんの現代劇にコミカライズした作品と、ホラー漫画家の伊藤潤二さんのコミカライズした2つになります。どちらの作品も漫画家が得意な“行き詰った感覚”が原作とうまく噛み合っているので、ぜひ手に取ってほしいですね。太宰治本人に興味があるという方は太宰の青春期を描いた『ダス・ゲマイネ』がオススメです。第三者的な視点で描かれているのですが、破滅がしっかりと表現されています。作家本人を描くというのが漫画と文学との接点があり、かなりの良作がありますね。列挙すると、関川夏央と谷川ジローが夏目漱石を描いた『坊っちゃんの時代』や夏目漱石を囲んでいた人々を描いた作品である寺島らての『或る日、木曜会で。』、ほかにも芥川龍之介を題材とした松田奈緒子の『えへん、龍之介』や芥川龍之介を小説家ではなく漫画家として描いた山川直人の『澄江堂主人』などですね。」
―――今回オススメしていただく漫画のご紹介をお願いします。
「1つ目が久世番子の『よちよち文藝部』。もう1つが柳本光晴の『響 ~ 小説家になる方法』です。『よちよち文藝部』は教科書で名前を見たことのあるような文豪20人の魅力を1話につき8ページで紹介しています。自分好みの文豪を見つけられる作品ですね。“太宰治の命日に行われる『桜桃忌』に行ったレポート”や“夏目漱石の小説の『坊っちゃん』がSNS時代を生きていたら”とか、文豪が家族に送った手紙を拝見するなど・・・。『そんなアプローチがあるのか!』という切り口ですね。」
―――2つ目の『響 ~ 小説家になる方法』についてもお願いします。
「これは特に小説家の方が読まれると『ん?』と思うかもしれませんが、あらすじを簡潔に話すと、突如現れた15歳の天才女子高生小説家が主人公なのですが、とある文芸編集部の新人賞宛に送りつけられた、直筆の投稿原稿を偶然見つけた編集部員が『これは天才だ!』というところから始まります。作中で響は芥川賞と直木賞をW受賞したり、新人賞の授賞式でほかの受賞者を殴ったり、その後文部科学大臣を殴ったりもしています(笑)。そういうところに注目しがちなのですが、個人的な文学ポイントとしては響周辺にいる文芸部の人間が気になるなと思いました。周りの人間は『こんな圧倒的な才能を目の当たりにしてどうやって小説を書くんだ?』とそれぞれが考えるようになるんですね。なのでそういうところの展開を期待して読んでいます。」
▼久世番子『よちよち文藝部』 文藝春秋
https://note.mu/bessatsubunshun/m/m5a597ce4987a
▼柳本光晴『響 ~ 小説家になる方法』 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09186769