FUTURES~Sense of Wonder~2018年6月13日(水)

ゲストは、高根枝里さん。



今回のゲストは、高根枝里(たかね・えり)さんです。

<プロフィール>
ニューヨークの「ハンター大学心理学・学科」を卒業後、更に「ニューヨーク大学・大学院Visual Arts Administration学科」を卒業。その後「国際交流基金・ニューヨーク日本文化センター」に勤務してから帰国。帰国後は、「セゾンアートギャラリー」のディレクターを経て、現在はアートのマネジメントやキュレーション、アートのコンサルタントなどをグローバルに行っています。



―――高根さんのお仕事を簡潔にまとめるとどういうものですか?
「アーティストのサポートです。アーティストとして生きていけるような仕組みを支える人という感じですかね。黒幕的な(笑) アーティストは制作に集中して作品づくりに励みたいという想いが強いと思うので、PRであったりアドミニストレーション(管理)とかであったりですね。それこそ手を動かさなければいけないけれども、出来ないところを手伝う人です。」


―――一年間語学学校に通ったら英語は出来るようになりましたか?
「ある程度できるようになりました。2003年に語学学校へ行ったときにはそこに日本人が少なかったので、友達同士でも英語しか話せないという環境があったというのは良かったのかもしれないです。」


―――当時、日本人が少なかったのは理由があるのですか?
「2003年はイラク戦争が始まった年だったので、行きの飛行機もすごく空いていましたし、現地もちょっと殺伐としていて、あまり平和という感じではありませんでした。両親は最初、反対していたのですが、あまり深く考えないところが良いところなので大丈夫でした(笑)」



「ニューヨークは楽しかったですね。すべてが新鮮で、日本では経験しなかったことがいろいろありました。例えばスーパーマーケットでも、店員がガムを噛みながらレジを打ったり、お客さんもぶどうを買う前に食べ始めたりとかで、『価値観を自分で決めちゃうんだ!』って思いました。それに対してお咎めもないですし、飲み物も飲んで減っているけど、それをレジに通していることもあって、『それが許されるところなんだな』というのは新鮮でしたし、『価値観は自分で作るものなんだな』ということを最初の1年で学びました。」

―――小さいところから価値観の違いというものがあったのですね。
「そうですね。特にアートやペインティングの価値観を決めるというところでも、良いと思えば『良い』と言ってくれるし、嫌いなものは『嫌い』と言う。誰でも自分の中の価値観がすごくしっかりしているような気がしました。」


―――“右に倣え”ではなく、それぞれがしっかり意思を持っているということですか?
「友人同士でも『私はこの人は好きじゃないけど、良いんじゃない?』みたいに(笑) ほかにも、有名だったら良いんであろうという風潮がありますが、ニューヨークでは若手でも良いものであれば評価されます。」


―――ニューヨークでの1カ月の生活費はどれくらいかかりましたか?
「年によりますが、2003年はイラク戦争の年であったので物価はそんなに高くなかったです。学生のときはルームメイトがいたので、家賃はクイーンズという場所で500ドルでした。私は13年間ニューヨークにいて、最後の年の2016年にはブルックリンのウィリアムズバーグというところで一人暮らしをしていたのですが、そこでは1800ドルでした。物価が上がって家賃も上がりました。」


―――13年もニューヨークに住んでいると社会情勢的にも変わってくるという意味で、移り変わりを見ていっても楽しそうですね。
「そうですね。ただアーティストは大変で、スタジオも借りながら自分の家も家賃を払わなければならないので、私が日本へ帰国する2016年ごろはアーティストがニューヨークから郊外へ引っ越すことが多かったです。」


―――ハンター大学では“心理学”を専攻され、卒業後はニューヨーク大学大学院で“Visual Arts Administration”を勉強となっていますが、この変遷の理由は何ですか?
「大学では心理学が専攻ではありましたが、副専攻でVisual Artsで自分で作っていたときがあり、心理学とアートの両方をやりたいと思っていました。しかし共通点を持つものがアートセラピーなどしかなく、それだとアーティストとの関係が遠くなってしまうと思い、私は“アーティストの心理”が面白いと思ったので、アーティストをサポートするということを考えたときに、Visual Arts Administrationマネジメント学科のほうがより現実的にサポートできると思い、移行しました。」


―――“Administration”と言うからには“管理”という意味ですか?
「そうですね。ニューヨーク大学は絵画などに特化していて、ペインティングや彫刻を扱うプログラムを学べるのですが、学科の中でも“営利団体”と“非営利団体”に分かれていました。営利団体の方を受けたい人は就職先として、ギャラリストやオークション会社があり、非営利団体の方は、美術館や教育学科が多かったイメージです。そのため、とてもカテゴライズされている学科だなと感じました。私は営利の方だったので、授業ではファイナンシャルアカウンティングなど経理や会計など、自分がギャラリーを持った時のためにファイナンシャルの仕組みを実践的に学びました。」



”価値観を自分で決める”
思っていてもこれを実践に移すことは難しいものですよね。
でも、自分の物差しを1つ持っておくということは大切ですし、その物差しで物事を考えてみるというところから始めてみてはどうでしょうか?

来週も引き続き、高根枝里さんにお話を伺います!


レイヤーズ・オブ・ネイチャー その線を超えて
2018年4月21日〜9月2日
セゾン現代美術館
<https://www.smma.or.jp/>