未来の総理大臣!?大阪府・吉村知事は本当にコロナ禍のヒーローなのか?

2020年9月7日Slow News Report


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速水:Slow News Report 今日は、吉村洋文大阪府知事はなぜこんなに注目されているのか、コロナ禍の強いリーダーというイメージの正体について考えたいと思います。お話を伺うのは関西を拠点に活動するノンフィクションライター、フロントラインプレスの松本創さんです。東京でテレビを見ていても吉村府知事はよく出ているなという印象が強いんですが、関西ではもっとローカルの番組にたくさん出ているわけですよね。


吉村府知事は視聴率を稼げる

松本:そうですね大阪の番組を中心に、3月から7月までの集計をすると計 83本に出てました。昼間から夕方にかけてやっているような情報バラエティ番組に、番組の中では大体吉本の芸人さんなんかがコメンテーターとして座っているんですけれども、そこに出て大阪府のコロナ対策を説明したりする。それを皆さんがわっともり立てるみたいな、そういう形でしたね。

速水:大阪ではそれが受けているんですか。

松本:そうですね。3月から出演回数が急に増えたんですが、吉村さんが出ると視聴率が上がるということで、在阪各局はとにかく何でもいいから吉村さんを出せとか、何でもいいから吉村さんのコメントを撮ってこいとか、会見を生中継するとかですね、そんなこんなで吉村さんの姿を見ない日はないというくらいの露出ぶりです。

速水:今の話でちょっと気になるのは、明らかに吉村府知事を持ち上げるような態度なんですか。

松本:政治的な思惑がどうのというよりは、自分たちの大阪の代表の若くて力強いリーダーであるというようなイメージで、割と素朴に持ち上げているような感じでは見受けられるんですけどね。

速水:ツイッターのメッセージをひとつご紹介したいと思います。「関西では吉村府知事のメディア露出はより高くなるのでしょうが、セットで橋下徹氏の露出度もそこそこあって、関西らしい波乱をメディアの中で演出させて注目を集めようとしているのかもしれないと思ってしまいます」 というご意見なんですが、松本さんは橋下時代から維新の取材をされていますよね。吉村知事と大阪のテレビの関係という話を前半で伺いましたが、これは橋下時代にやっていたメディア戦略の延長というふうに考えていいんでしょうか。


大阪維新の会と在阪テレビ局の関係性

松本:そうですね。かつて書いた本の中で在阪メディアと橋下さんの維新の“共犯関係”という言葉を使ったんですけれども、そもそも橋下さん自身がタレント弁護士で、元々は大阪のテレビから出てきたということもあって、在阪局の製作陣の中に自分たちが政界に送り出した我々の代表であるというような身内意識が非常に強いところがあるんですね。そして吉村さんと橋下さんも大阪のテレビ関係者の人脈の中で知り合っているというところもあって、大阪のテレビ局と維新の政治家の親和性は非常に高いと思いますね。

速水: 3月下旬に大阪兵庫間の往来自粛を打ち出しましたが、この舞台裏みたいなものってあるんですか。

松本:これは三連休の直前に、これもテレビ番組の生出演中に唐突に発表したんです。背景を言うと、厚生労働省の専門家会議の資料に今後3週間大阪府と兵庫県内外の往来自粛という提案があったんですね。これは正確に読めば大阪府内でも兵庫県内でも全員で不要不急の往来自粛をしてくださいということだったんですが、吉村さんはこれを連休中の三日間大阪と兵庫の間の往来を自粛すると、枠を緩めて兵庫というターゲットを作って意図的に発表したんです。これは吉村さん的に言えば経済の影響を最小限に抑えるための政治判断だということなんですけれども、あんまり科学的根拠のない、まさに政治的な判断だったと思うんですね。

速水:これ兵庫としても対立を煽られている感があるというところに、ちょっと目先が違うところに話題が行った部分がありますよね。

松本:兵庫にも全く何も連絡がないままにテレビで発表していますね。


維新の政治パフォーマンスとイソジン騒動

速水:そして次にお伺いしたいのが、同じく維新の松井大阪市長が雨合羽を募集したという話です。

松本:これは医療用防護服が不足しているということで、これも大阪大学の先生と松井さん、吉村さんが会談をした直後に記者の前で「じゃあ雨合羽を市民から募集します」ということを急に呼びかけたんです。その結果、善意の雨合羽が大阪市役所に33万枚も集まってしまって、その仕分け作業のために連日市役所の職員が数十人単位で駆り出されました。そしてどうにか仕訳は済んだんですけれども、提供先がなかなか無くて、廊下とか玄関ホールに積んでいたら、これが市の火災予防条例に違反しているということになったんです。大量の合成樹脂の物品を保管していると消防に届け出が必要なんですけれども、それを怠っていたためにそういうことがあって、そんな大混乱ぶりがあったということなんです。

速水:これは政治的な意図というよりもうっかりに近いものですかね。

松本:うっかりというよりは非常に現場無視のパフォーマンスというか、調整不足のある種の思いつきに近いものだと思います。

速水:それも維新のスピード感みたいなことの裏返しなのかなと思いますが、そしてイソジン騒動もありましたね。

松本:その会見は3日ほど前に決めたらしいんですけれども、報道陣に伝えられたのは当日でした。その日はある別の会見が予定されていたんですけども、それに付け加えて第二部でこれをやりますということを当日突然言われたと。これには背景があって、なかなか大阪の感染拡大が止まらない。その上に大阪のミナミという地区の飲食店に時短や自粛を要請して、これが非常に飲食店から評判が悪かったんですね。その中で「これでは大阪特区構想の住民投票にも反対せざるを得ない」という声が出てきたんです。この悪評判を払拭して世間的評価を取り戻したいという思惑があったんだろうと言われています。それで数日前に聞いていたうがい薬の研究を、まだまだ研究の初期段階で生煮えの状態であるにもかかわらず、政治的思惑を持って打ち出してしまったということなんです。これは科学の倫理という意味でも非常に問題が多いといわれています。

速水:このことに関してはネットなんかでもすぐに批判が来て「科学的根拠は大丈夫なの?」という話になりましたが、大阪の府民たちやメディアの反応はどうだったんでしょうか。

松本:これは全国的な傾向とは違ってると思いますが、まさにあの会見を大阪の某テレビ局なんかは“コロナ特効薬の発表!”みたいなテロップをつけてそのまま流したりしていました。大阪ではそれほど強い批判が起きたわけでもなくて、「確かに多少勇み足の部分もあったけれども、何もしないよりはいいじゃないか」みたいな感じですね。うがい薬の件で吉村さんが支持を下げたというようなことはあまり見られなかったですね。


大阪府民は維新のパフォーマンスに踊らされているのか

速水:維新そのもののイデオロギーというか、吉村さんの話としてもそうなんですけど、パフォーマンスを非常に重視していて、その辺が視聴率に繋がって、大阪の人たちも支持している。つまりパフォーマンスだったり、「無駄をやめろ!」みたいなポピュリズム的な政治を維新は行なっていると言われていますが、大阪の有権者たちはパフォーマンスに踊らされていると単純に捉えていいんでしょうか。

松本:そこは非常に難しいところです。私の見る限り、維新政治の主張の内容は、公務員バッシングをするとか、非常にポピュリズム的だと思うんですけれども、では有権者が単純に騙されて支持をしているのかというと、そう単純に言えないところもあるんです。維新の政策的な面をきちっと理解して批判的検証を加えた上で支持をしているんだという投票行動の研究があるんですね。つまり合理的な理由があって支持をしているということなんですけれども、じゃあ“合理”の内容は何だろうと考えて色々取材をしていくと、やはり経済的なメリットを期待させているということなんです。維新の言葉で言うと“大阪の成長を止めるな”とよく言ってるんですけれども、都市の活性化みたいなことですよね。これって単純に自分が儲かりますとか、税金が安くなりますとかいうようなメリットではなくて、景況感というか体感景気に近いようなものだと思います。“大阪都”とか“副首都”であるとか、“大阪の逆襲”とかそういう言葉をよく言うんですけれども、稼げる都市にする、景気のいい都市にする、資本を呼んできて日本の中のプレゼンスを増していくというようなこと。トランプさんの言葉になぞらえていうとMake Osaka Great Again みたいなですね、そういうような期待感を背負っているということはあると思うんですね。

速水:彼のような発信力のある知事をトップに据えることによって、中央からたくさん事業とか注目とかを集められる。それは基本的に自分たちのためになるんだという判断のもとで支持している部分もあるということなんですね。今までのいろんなパフォーマンスは、もちろんコロナウイルスをうまく収束させたいという思いもあるでしょうが、ちょっと透けて見える部分に11月1日大阪都構想の住民投票がありますよね。


パフォーマンスの先には大阪都構想が

松本:そうですね。さっきも言った往来自粛の話もそうですけど、経済への影響をできるだけ最小限に抑えたいというのは、結局11月の秋に予定通り大阪都構想の住民投票をやりたいからだという風に見る向きが多いですね。

速水:ちなみに大阪の人々は大阪都構想については賛成、反対どういう状況なんでしょうか。

松本:ちょうどこの週末にメディア各社が行った世論調査の結果が発表されたんですけれども、今のところ大阪都構想賛成というのがほぼ5割で反対が4割ですね。なので10%ぐらい差がついています。

速水:なるほど。このまま行くと都構想はそのまますんなりいってしまう可能性が高そうですね。

松本:その通りですね。前回2015年に府民投票を行った時は、票数にして1万票ぐらいの僅かな差で否決されたんですけれども、今回はすでに10%の差が付いてますし、5年経ったぶん若返っている部分もあります。

速水:当時は年配の人達の方が反対に回ったというところがありましたね。

松本:維新の支持率もずっと高いまま推移していますし、いろいろな要素を加味すると、やはりこのまま行くと賛成多数になる可能性が高いですね。

速水:このまま住民投票になってしまって大丈夫なのでしょうか。

松本:先ほどの世論調査によると、コロナの対応の影響もあって住民説明会が開かれないなど、説明が十分でないと答えている人が7割いるんですね。

速水:大阪の中でも説明が足りているとは思っていない中で進んでいるところがあるということなんですね。住民投票云々の前に、何が都構想なのかというところをもう一度議論が必要なのかもしれません。今夜はノンフィクションライター松本創さんにお話を伺いました。松本さんありがとうございました。

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