森友学園問題とその後 Part2

2020年7月14日Slow News Report



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速水:Slow News Report今夜は昨日引き続き大阪日日新聞の記者相澤冬樹さんにスタジオでお話を伺います。昨日は森友問題をめぐる公文書改ざんを強要され自ら命を絶った赤木俊夫さん妻雅子さんが夫の手記を公表するまでに何が起こったのか、雅子さんの心情の変化なんかについてもお伺いし、大きな反響がありました。そして、この問題が急展開を迎えています。1月に弁護士が代わり、3月に週刊文春の記事が出てという流れの中で、明日15日赤木雅子さんが国と佐川宣寿元理財局長を訴えた裁判の初公判を迎えます。この裁判がどういう性質のものなのかというのを改めて教えていただけますか。


真実を明らかにするための裁判

相澤;国賠訴訟ですと、基本的には国によって損害を受けたから損害賠償を支払えという裁判になるわけですね。つまりお金を巡って争うことになります。というか、そういう形でしか争えないようになっていますので、今回の裁判も一応そういう形にはなっています。ただ実際には赤木雅子さんが裁判を起こしたのはお金が欲しいからではないんですね。夫がどうして亡くなったのか、どうして改ざんをさせられたのか、どんなふうにさせられたのかというようなことを明らかにしたいということなんです。財務省は調査報告書というのを出してますけれども、それを読んでも具体的な事は何一つ書いていない。雅子さんは、夫がどうして亡くなったのか知らないと、自分は人生をリセットできないとおっしゃっているんですね。それで真相を知るための手段として裁判を起こして、そこに証人として財務省の関係者、例えば佐川さんはまさにそうですけれども、そういった人たちを証人として呼んで、法廷で証言をしてもらうことができれば、真相に近づけるのではないかということなんです。実はこれが最大の狙いです。だから、極端な話お金は1円でもよかったんです。ところが仮に1円で裁判を起こしたら、国はおそらく認諾といって、裁判で請求されたものを丸呑みして、その代わり実質的に裁判所での審理は一切しないということになります。それは国にとって都合がいいわけですね。だからそれをさせないために、1億1000万という金額を請求しています。赤木さんとしてはとにかく国が「言われた通りお金払いますから、はいおしまい」と言わせずに裁判ができるかどうかというのがいちばん大事なことだったんですね。
先週ですけれども、国がこの裁判で自分たちがこんな主張をするよという事を概略で伝えてきましたが、それでは一応争うとなってるんですね。赤木さんとしては何とか真相を明らかにできるような裁判にしてほしいと思っていて、実は明日、裁判の冒頭に赤木雅子さん本人が意見陳述というのをするんです。自分の原告としての意見を述べるのですが、実はこれわりと珍しい事なんです。こういう訴訟で、原告は意見を法廷で言いたいと言っても、裁判官が書面で審査しますからと、させてくれないことが多いんです。でも今回はきちんとさせてくれるということなので、赤木さんとしては、裁判官は私の言い分をちゃんと法定で聞いてくれるんだなという安心感があります。10分間話をするんですが、その10分間の中で自分がこの裁判を起こした思い、この裁判を通して真相が明らかになるような裁判にしてほしいという、裁判官へのお願いをすることになっています。


佐川元理財局長は裁判に出てくるか

速水:一方で、訴えた相手、佐川宣寿元理財局長が裁判に出てくるとは限らないですよね。

相澤;被告は必ずしも法廷に出てこなくてもいいんです。代理人弁護士が入ればいいんですね。実は佐川さんは今何をしているか本当にわからないんです。国会で証人喚問されたら出てこないわけにはいきませんので、これは出てきましたけれども、以後はいったい自宅にいるのかどうか、自宅の様子を見ていてもご家族の姿は見えるんですけれども、佐川さん本人の姿はまるで見えない。仮に自宅にいるとしたらずっと家の中に閉じこもっているということになりますし、家の中にいないとしたら、どこかよその方にずっといるということになりますし、どちらにせよ佐川さんは完全に身を潜めているという状況を考えると、ここであえて法廷に出てくるとはちょっと考えづらいですよね。

速水:なるほど。そうなると真相解明という意味では、赤木雅子さんが望んでいることというのは、あくまでも佐川元理財局長による書き換えの指示が認められるかどうかというところがもちろん重要で、本人が出てきたとしてもそれに関してしゃべるかどうかというのは分からないんですが、辿り着くべきゴールはちょっと難しいんですかね。

相澤;裁判の重要な証拠の一つとして、亡くなった赤木俊夫さんが遺した手記というものがあって、そこには財務省財務局の人間の実名がいっぱい出てきます。佐川さんももちろん出てきますけれども、その人たちを全員証人申請して、裁判所で証言してもらおうとしています。ここに書かれていることは事実なのかどうかということを聞くわけですね。ただ証人申請しても、裁判所が認めるかどうかというのがありましすし、裁判所が認めたとしても本人が出てくるかどうかという問題もあります。これは刑事ではないので、民事は強制できないんですね。また、本人が出てきたとしても、本当にきちんと真実を語るかどうかというのも分からない。ハードルはいっぱいあるんですけれども、でもやっぱり出てきてくださいと言わないと始まらないので、証人申請はありったけします。佐川さんはもちろんするということになってます。

速水:15日発売の赤木雅子さんと相澤さんの共著「私は真実が知りたい」の中にも書かれていますが、赤木俊夫さんがこの世を去った当初、雅子さんの元に財務省の同僚たちが来ていろんな話をしている中で、お葬式にも来たんだけど記帳もしないで帰ったという話がありますが、やっぱり自分たちの省を守るという意識を強く持っているわけですよね。

相澤;役所を守るというよりは、結局は自分を守る保身ですよね。本にも書きましたけれども、敏夫さんの上司は亡くなった翌日に自宅にきて、赤木雅子さんに「私たちをたよってください。なんでもサポートします。真相をうやむやにはしませんから」と言ってるんですけれども全部守られていないですし、お葬式に参列した人はだれも記帳しない。つまり自分たちが敏夫さんに関わったという痕跡を残したくないと考えいているとしか思えないんですね。近畿財務局一同というお香典も届いているんですが、これも誰が出したのか名前は一切ない。リストもないんです。それで雅子さんとしては孤立を深めて、結局財務省に頼っても全く何もしてくれないんだということになっていったわけです。


雅子さんの気持ちが変わり、メディアの取材を受けるように

速水:そんな中で赤木雅子さんのメディア対応の状況がここ1日2日で変わっている部分大きいと思うんですが、今日の朝日新聞の一面なんかでもこの記事が出ていますが、ちょっと状況が変わってきていますよね。

相澤;やっぱり赤木雅子さんは、根本的にはマスコミが怖い、嫌いというのがあって、取材に応じるということに一切前向きじゃなかったんですよ。3月18日に提訴して記者会見をするときも、自分はもちろん出てこないで弁護士さんがやると。個別の取材をしたいという話は当然その頃から何社からも来ていたんですけれども、それを受けたくないという気持ちが強かったんですね。僕は取材を受けて報道してもらって多くの人に知ってもらった方がいいと言ってたんですが、なかなかご本人がその気にならなかったんです。ですが、ここに来て、例えば再調査を求める署名に35万人が賛同したとか、そういう支持、支援の広がりをすごく心強く思うようになってきて、じゃあ取材も受けていいかなという気持ちになってきたんです。でもテレビカメラには抵抗があったんですが、女の人の取材だったら受けてもいいみたいな話になりました。要するに、彼女は近畿財務局とか男社会の論理で苦しめられてきているので、男社会が息苦しいという言い方をしていますけれども、だから取材も女性の方がいいみたいなことを言っていて、たまたまそれを私が伝えたことでニュース23の小川彩佳さんのインタビューを受けるということになりました。それならというので報道特集の金平さんも一緒にインタビューしたんですけれども、それがすごくうまくいったんですよ。つい最近7月11日のことです。これがすごく大きな自信になって、じゃあ他の取材も受けようという話になって、昨日から今日にかけて在阪民放5社の取材を全部受けたんですね。そのうちの4社は今日夕方放送しています。また、NHK が明日クローズアップ現代でやるんですが、これも雅子さんはすごく期待していて、NHK にそれが出ればもう全テレビ局に出たということになりますね。


森友問題の本質

速水:この問題は注目されていて、それこそ35万人が署名して再調査をしなきゃおかしいだろうという話になっている。これは週刊文春の相澤さんが書いた記事の反響によるものだったんですが、その前の状況のメディアの状況なんかを見ると、一旦メディアがこの問題を躊躇した部分もあったと思うんです。そこに対する不満が35万人の署名になっていた部分もあると思うんですけれども、国民的な関心を背景にしなければ、個人が国を訴えて戦うというのは、ものすごく大きいもの対小さいものになってしまって潰される可能性がある。どう社会の関心を作っていくか、これメディアの役割でもあるわけですよね。

相澤;この事件は当初からものすごく特殊な経緯があって、例えば新聞でいうと朝日新聞は熱心にやるけれども、読売新聞と産経新聞は極めて冷淡とかね、ものすごく傾向がはっきり分かれる。テレビはそんな色はあまりないと思いますけれども、でも基本的にメディアって、特にテレビは飽きっぽいんで、一瞬で盛り上がりが過ぎちゃうと忘れていっちゃいます。あと面白いものに飛びついちゃうから、例えば籠池さん達がテレビでものすごく大きく取り上げられましたよね。

速水:キャラクターが立っていましたもんね。

相澤;でもそれは事件の本質とは違うところにどんどん入っちゃうわけですよね。だから一体何が問題だったのかなというのがわからなくなってしまう。森友問題って籠池さんの詐欺事件だよねと思われていますけれども、籠池さんは確かに詐欺の罪に問われていますけれども、森友問題の本質は森友学園に国有地を巨額の値引きをして売ったということ。これは買った森友学園の方じゃなくて、売った国の方がおかしいわけですよね。国有地を勝手に値引きしちゃいけないわけですから。学校の名誉校長が安倍昭恵さんだというので、話が大きくなっていった時に、安倍政権の是か非かに完全にシンクロしちゃって、その議論にどっち側も利用したというところがあると思うんですね。どんどん本質が見えなくなっていっちゃったという経緯をたどった時に、今回赤木雅子さんが夫の手記を出して裁判を起こしたということで、改めて本質のところに日が当たったんですよね。

速水:今は引き戻されたタイミングなんですね。

相澤:つまり公文書を改ざんして亡くなった夫がいると。その改ざんは全部森友学園に対する国有地売買の取引の事を書いている紙で、安倍昭恵さんの名前なんかは全部消しているわけですから、つまり土地の売買と値引きと改ざんは密接に関係あるわけですよね。だからこの二つを解明しないと、夫がなぜこんなことやらされたのかということは分からない。それを求めている人が今立ち上がっているわけですよね。


巨大組織を抜けたら自由に

速水:これ財務省の政権への忖度問題、そしてメディア報道の政権への忖度問題なんかにも広がっていて、実はこの問題は相澤さん自身の人生にも非常に大きく関わっています。 NHK の記者として森友問題に関わられことで記者を外されるという中で、取材を続けるために NHK を辞められました。これは自分の人生を大きく変えたと思うのですが、NHK を辞めたことに関しては今どう受け止めていらっしゃいますか。

相澤:やっぱり2年前に辞める時はものすごく辛い気持ちがありました。だけど記者をやることの方を優先して辞めたわけですけれども、辞めてみて初めて気がつくことがいっぱいありましたね。つまりNHKは巨大組織なので、そこにいるとやっぱりNHK の名前で取材できるし、信用力もあるし、安定した収入も得られるし、すごく巨大組織の恩恵を受けられるんですよね。だけど逆に巨大組織の制約があったんだということも、辞めて改めて気が付くんですね。それはいかに自由にものが言えなかったんだということ、いかに自分がやりたいことをやりたいようにやれなかったのかということは、辞めて初めて分かりました。それでやりたいことをやった結果が最初の本だったり、今回の赤木雅子さんの報道であったりという風に繋がっていくので、やりたいことがやれるようになったという意味では、あの時やっぱり辞めてよかったなと思います。人生は確かに大きく変わりましたけど、変わって良かったと思っています。

速水:もし NHK に記者のままいたら、ずっとそのまま取材を続けていたと思うんですが、その場合、赤木雅子さんと一緒に本を出したり、ラジオで発言したり、週刊文春の記事を書いたりというようにものを伝えることはできなかったんでしょうか。

相澤:そもそも赤木雅子さんが私に手記を託そうと考えたのは、私が森友事件の報道をしてそれから NHK を辞めたという経緯があったからです。つまり私のことを夫の敏夫さんのこととシンクロしてみてくれたんですよね。それで会おうという気持ちになったわけで、それがなかったら会わなかったはずです、当然敏夫さんの手記を公表することもできないし、赤木雅子さんのことを記事にすることもできないですから、全然人生は違ったはずです。

速水:同じ事件の影響を受けた者同士というところの共通点がきっかけになったという話ですが、昨日、今日相澤さんにお伺いした話は、赤木雅子さんと相澤さんの共著「私は真実が知りたい」の中の話とも非常に重なる話ですね。明日初公判を迎えるというタイミングでお越し頂き、どうもありがとうございました。

相澤:ありがとうございました。たった今、赤木雅子さんから LINE が届いてですね、「ラジオ頑張ってください。本の宣伝ですね」と、そのものズバリなことを書いてきました(笑)

速水:(笑)ちょっとユニークな方だということも、この本を読むと分かる部分もあります。相澤冬樹さん、どうもありがとうございました。

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