#15『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

是非これを見ながら聴いてください!


今月のテーマ:「The World of Black and Blue」(第7回:女性シンガーを讃えて)
パーソナリティ:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)


女性ジャズシンガーのリズムが見える

その声にはブルーズの影響

マーレイニーやベシースミスの影響がきこえる

彼女たちの声はジャズの楽器のように響く

まるでサックスやトランペットみたいだ

女性ジャズシンガーの多くの素晴らしい歌声のなかに

ジャズのエッセンスが見える

絵本『リズムがみえる I see the rhythm』(サウザンブックス社)より
(文:トヨミ・アイガス、絵:ミシェル・ウッド、翻訳:金原瑞人、監修:ピーター・バラカン)


<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>

― 今月は、ブラック・ミュージックの歴史を描いた絵本『リズムがみえる I See the Rhythm』を基に、ブラック・ミュージックの歴史を紐解いていきます。今回は「女性シンガーを讃えて」というテーマで、スウィング・ジャズの時代の女性シンガーを紹介していきます。

M1「When My Sugar Walks Down the Street」Ella Fitzgerald
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 まずは、エラ・フィッツジェラルドの曲を1曲。この曲は、彼女が24歳の時の曲です。
 彼女は、1930年代半ば、最初は完全に素人としてアポロ劇場に出てきましたが、前回紹介したチック・ウェブのオーケストラでフィーチャーされ、かなり注目を浴びました。1939年にチック・ウェブが病気で亡くなると、そのオーケストラは「エラ・フィッツジェラルドのオーケストラ」という名前に変わりました。

M2「Trouble in Mind」/ Sister Rosetta Tharpe
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 次は、エラ・フィッツジェラルドよりも2歳年上の、シスター・ロゼッタ・サープの曲。彼女は、ジャズ・シンガーというよりも、ゴスペル・シンガーです。
 彼女は、1930年代にデビューし、ゴスペルの世界ではたちまち大スターになりましたが、よくジャズ・オーケストラをバックに歌っていたので、ゴスペルなのかジャズなのかわからないところがあったと思います。彼女は一度、ジャズの世界に魅力を感じて、ゴスペル以外の曲を歌ったこともありましたが、保守的なゴスペルファンに怒られてしまい、結局ゴスペルの世界に戻り、その後、宗教的な歌詞の曲しか歌わなくなりました。
 この曲は、1910年代の曲で、ブルーズの誕生の頃に、よく歌われていました。

M3「God Bless the Child」/ Billie Holiday
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 続いては、シスター・ロゼッタ・サープと同い年のシンガー、ビリー・ホリデイの1曲。
絵本『リズムがみえる I see the rhythm』の中に、「ママやパパがお金持ちでも、自力で生きる子こそ強いのさ。」という文章がありますが、それはこの曲の歌詞です。
ビリー・ホリデイが珍しく自分で作った曲ですが、つらい幼少期を過ごしたからか、時々、現実主義的な曲を作ることがありました。(一人で作ったわけではなく、共作者がいます。)その後、この曲は名曲として、色々な人たちが歌うようになりました。

M4「Strange Fruit」/ Billie Holiday
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 ビリー・ホリデイの曲をもう1曲。1939年に彼女が歌った曲で、『奇妙な果実』という邦題がついています。黒人がリンチされる模様を描いた曲で、プロテスト・ソングとして物議を醸しました。
ビリー・ホリデイを発掘したプロデューサー、ジョン・ハモンドは、「こういう曲を彼女が歌うべきではない」と、レコーディングを拒否しましたが、彼女はどうしても歌いたくて、わざわざ他の会社からこの曲を出しました。

M5「Words Can't Describe」/ Sarah Vaughan
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 最後は、絵本『リズムがみえる I see the rhythm』で紹介されている歌手の一人、サラ・ヴォーン。1940年代にデビューし、1980年代までずっと活動した人です。数々の女性ジャズ・シンガーのなかで、最も卓越した技術を持っていた歌手と言っていいと思います。