FUTURES ラジオ版学問ノススメ 蒲田健の収録後記

ゲスト:上田慎一郎(映画監督)

「ムダ」を「ムダでない」にするために「今日」を生きる

上田慎一郎さんのデビュー小説「ドーナツの穴の向こう側」

監督をつとめた映画「カメラを止めるな!」で大ブレイクを果たした上田さん。その嬉しい余波として陽の目を見ることになったデビュー小説。10年以上前に書かれたそれは、当時まだ名も無きクリエイターの卵であった上田さんが、ほとばしる情熱で一気に書き上げた作品。ご自身曰く、相当前のめりで全力投球。

女子高校生があるきっかけでちょっとだけズレた世界で生きることになる。当たり前とは、常識とは、日常とは、何だろう?ということを、様々なユーモラスなズレの中で問いかけてくる。

発表当時は残念ながら商業的な成功とはならず、借金と在庫が残る結果となった。が、そのクオリティは確かなもの。とても面白い。

売れる売れないということには、人知の及ばない“運”というファクターが多かれ少なかれ介在している。したがって、いいものを作れば必ず売れる、とは限らない。だがそれが認められるべき質のものであるならば、時間が経ったあとでも何かのきっかけで改めて認められる=売れる、ということになる可能性はある。

手を抜かず、その時点でのパーソナルベストを愚直に追い求める。これこそがプロフェッショナルとしての矜持。幸運の女神も最終的にはそういうところに微笑みたくなるはずだ。

「自らの 信じる者に 邁進す
       そのうちやがて 結果オーライ」

P.S. 10年前の前のめりっぷり、猪突猛進ぶりがよくわかる上田さんの当時のブログを読むと、自分が幸運の女神なら、この男にいつかはちゃんと微笑んであげようと思うだろうなあ。