▼音声はコチラから!
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▼小川哲『ゲームの王国 上』(早川書房)
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013610/
▼小川哲『ゲームの王国 下』(早川書房)
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013622/
【書評】
冒頭に出てくる“サロトサル”という人物はポル・ポトなんですね。
『ゲームの王国』がどういう話かというと、舞台は1970年代のカンボジア。
ゲームの天才である少年と、
嘘を見破れる少女(=ポル・ポトの隠し子)を巡る話になっています。
この本は上下巻になっていて、
上巻は1975年のカンボジアの話、下巻は2023年の話をしているんですよ。
過去や未来だけを書く小説って結構あると思いますが、
僕らが生きている射程の中で描くというのはチャレンジングで難しいことなんですね。
なぜなら、2023年はこれから迎えるものなので、「全然予測できてないじゃん!」
って比べられたり、あとから読むと「古いor新しい表現だな」って思ったり、
現実に負けてしまうんです。
この小説の面白いところを3つ言うと、
1つ目は上下巻の展開の仕方。
2つ目はキャラクターが魅力的。
3つ目は題材の豊富さ。(政治・ゲーム・脳科学など)
※これから読む方へ!
政治的背景を知っておくと、とてもわかりやすくなります。
① 1970年代のカンボジアは政治的に腐敗していた。
② もともとポル・ポトは腐敗を変えようと革命を起こした。
③ クメールルージュ(ポル・ポト派の集団)が革命を起こした結果、より政治が腐敗した。
【海猫沢めろん】
ジャンルはSFですが、スター・ウォーズのようなSF感はありません。
政治的かつ現実的な今の時代に根付いたSFです。
後半では、嘘を見破れる女の子が政治によって現実を変えようとしているのに対して、
ゲームの天才の男の子はバーチャルなもので現実を変えようとしているという
対比が面白いです。