ゲスト:江國香織(作家)
書くことは自分をすこしだけこぼすことだ
江國香織さんの最新刊「物語のなかとそと 江國香織散文集」
この20年ほどに様々なメディアで発表してきたエッセイや掌編小説を一冊にまとめた今回の散文集。
生活の多くの時間を「書くこと」「読むこと」に費やしてきているという江國さん。そして“そちらの世界”である本の世界に多くの時間を費やしているがゆえに、現実の“こちらの世界”で実感としては5年ぐらいしか時間がたっていないのに実は20年も経過しているという事実に驚愕するという。
それほどまでに没入することのできる“そちらの世界”。
ご自身は美味しいものを飲み食べることが大好き。まだ食したことのない未知のものがあるであろうと想像することも大好き。
本も実はその点で通底している。まだ見ぬ、素晴らしい本が存在するはず。もしかしたらそれは全く知らない言語で書かれているかもしれない。一生出会うことはないものなのかもしれない。しかしそれが存在するであろうという想像、そしてそこに自分は生きているということが、得も言われぬ幸せをもたらしてくれる。
“そちらの世界”は没入する必然性のある、芳醇な世界なのである。
「そちらの世界で想像広がれば
こちらの世界 さらに豊かに」
P.S.こちらの、抽象的でとらえどころのない質問(申し訳ございません!)に対してもじっくりと真摯に言葉を吟味し紡いでくださる江國さん。プロフェッショナルとはかくや、という佇まいでした。