FUTURES ラジオ版学問ノススメ 蒲田健の収録後記

ゲスト:羽賀翔一(漫画家)

80年経っても変わらぬ普遍

羽賀翔一さんの最新刊「漫画 君たちはどう生きるか」

1937年に出版された吉野源三郎の名著「君たちはどう生きるか」。軍靴の音が不気味に響くようになっていた時代、人々が周りの顔色を窺い、モノを言うのにも躊躇するような風潮の中、リベラル雑誌「世界」初代編集長でもあった吉野はそれに一石を投じようとする。しかし正攻法でいくと検閲に引っ掛かり、世に出ることもままならない可能性がある。そこでチェックが比較的緩やかである児童書という体裁で出版された。
結果的にこのことが、メッセージをよりストレートに伝えることに功を奏した。
中学生の主人公コペル君が、友人関係といった身近な問題から、世界のありようとは何だろうという大きな問題まで、様々に悩み、疑問を感じ、模索する。
児童書の体であるから、表現は平易であり、描き方は直球ど真ん中のスタイル。シンプルでダイレクト。故に昭和初期という時代背景であるにもかかわらず、平成後期の現代にも通ずる普遍がそこにある。

羽賀さんは今回漫画化に当たって初めてこの作品に触れたという。一読してその世界に魅了された。そしてこの世界観を漫画に変換するにあたって、ただトレースするのではなく、原作の世界に身を置いていたらこう見えるだろうなというところを、漫画ならではの表現手法を織り込みながら描いたという。
このことによって、原作が持つ普遍性はさらに強い力をもって読む我々に強く迫ってくる。

メインターゲットは中学生年代の小年少女ということになるのかもしれないが、「どう生きるのか」という人間の最も根源的な問い、その普遍性は老若男女すべてに響くものでもある。


「君たちは 人間として どう生きる?
          古く新しい 永遠の問い」



P.S.ターゲットど真ん中年代の息子をもつ親として是非読ませたいと思うので、さりげなく目に触れるようにこの本を部屋に置いておこうと思います(笑)。