箱庭のような景色が広がる広島県尾道市「千光寺山」

放送後記

ラジオ日本遺産。今回は「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」:広島県尾道市の千光寺山をご紹介しました。



山陽本線:尾道駅を降りると目の前に広がるのは、対岸の向島。そして、その向島との間に流れる、一筋のまるで川のような海:尾道水道。振り返ると、尾道三山と呼ばれる比較的小さな山々がそびえて、その斜面、そしてふもと:およそ2キロの狭い範囲には、お寺や家々がひしめき合っています。

それは、まるで箱庭のよう。

その街並みの魅力は、数々の文学作品、映画作品、ドラマ・CMでもお馴染み、ですよね。

さて、そんな、尾道で特に目に入るのが・・・尾道三山の一つ:大宝山、別名:千光寺山(せんこうじやま)。
山頂近くにある千光寺の朱塗りの本堂、そして中腹にある三重の塔:天寧寺塔婆は、尾道の象徴的な存在となっています。



千光寺山の山頂へは、ロープウェーがオススメ。山頂までは、わずか3分、という短さですが、その間は、とにかく絶景です。山肌には、その造形も美しい寺社の数々。
そして、人々の営み、息づかいまで感じられるような密集した家々と路地。
尾道水道を行き来する船。そして春の時期は、桜の美しさも加味されて、本当に、息をのむような美しさです。



さて、山頂から千光寺までは、文学のこみちを通ってむかいます。
志賀直哉、林芙美子など、尾道を愛した文人の碑を横目にしながら坂道を下ると、そこは、千光寺。

大同元年:西暦806年からその歴史が始まったとされるお寺は、朱色の本堂も、断崖にせり出すようにつくられた鐘楼ももちろん見事ですが、その周辺の巨大な岩にも目を奪われます。
かつては、密教の修行の場だったというこの場所の岩肌には、現在も多くの仏教彫刻が残り、日本屈指の石造物産地であった尾道の歴史を感じることが出来ます。



中でも、阿弥陀三尊像:摩崖仏は市の重要文化財にも認定された実に古いモノ。
中世からこの街の人々をずーっと見守ってきた、その三つの像は、笑っているようにも、頷いているようにもみえる、実に優しさをたたえた像です。

ぜひ、あなたも日本遺産へ。新たな日本の魅力を再発見してくださいね。