JAPAN HERITAGE ~ラジオ 日本遺産~ 鎌倉文士

放送後記

今月のテーマは”いざ鎌倉~歴史と文化が描くモザイク画のまち”
今回ご紹介したのは、鎌倉を愛した作家たち、鎌倉文士でした。

鎌倉は温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、保養地として人気を博しましたが、昭和に入り、鎌倉に定住する文学者も増え、彼らはやがて鎌倉文士と呼ばれるようになりました。

■文士には、大佛次郎(おさらぎじろう)や久米正雄、芥川龍之介らがいますが、後にノーベル文学賞を受賞した川端康成も終の棲家として、鎌倉で生涯を送りました。


また鎌倉ゆかりの文学者として、
夏目漱石は、円覚寺での座禅の体験を、小説「門」に書き、
三島由紀夫は、鎌倉文学館を小説「春の雪」の別荘のモデルとしました。
仲間と集い、鎌倉の自然を愛し、作品に描いた文学者たち。



■鎌倉文士の象徴的な出来事が、「御谷(おやつ)騒動」です。
昭和35年。「昭和の鎌倉攻め」と呼ばれる宅地開発の波は、
聖域ともいえる鶴岡八幡宮の裏山「御谷(おやつ)」にまで押し寄せていました。
この時立ち上がったのが、鎌倉文士。

彼らは市民や僧侶と共に、ブルドーザーの前に立ちはだかり、反対運動を行いました。
わずか1週間で2万を超える署名を集め、募金運動へと広がっていきます。

■昭和39年、一年にわたる話し合いの末、開発は断念、御谷は守られました。
これが一つの契機となり、「古都保存法」が制定された事で、
歴史遺産と緑が調和する鎌倉の景観が現代へ引き継がれることとなったのです。

■古都保存法が制定され、今年で50年。
鎌倉のまちは、数多くの人々を今なお魅了し続けています。
自然と一体となった神社仏閣、優れた技術を誇る木造建築、鎌倉文士らが残した芸術文化、歴史ある伝統行事・・・
鎌倉は、まるでモザイク画のように様々な要素が組み合わさり、特別な魅力に満ち溢れています。

ぜひ、あなたも日本遺産へ。新たな日本の魅力を再発見してくださいね。